37億光年先の大衝突 「弾丸銀河団」をジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測【今日の宇宙画像】
- ホーム
- 37億光年先の大衝突 「弾丸銀河団」をジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測【今日の宇宙画像】
【SAPOD】今日の「宇宙画像」です。soraeが過去に紹介した特徴的な画像や、各国の宇宙機関が公開した魅力的な画像、宇宙天文ファンや専門家からお寄せいただいた画像を紹介しています。(文末に元記事へのリンクがあります)
(引用元:NASA)
こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線カメラ(NIRCam)で観測した銀河団「1E 0657-56」、別名「弾丸銀河団(Bullet Cluster)」です。
りゅうこつ座の方向、約37億光年先(※1)にあるこの銀河団では、大小2つの銀河団が衝突する様子が観測されています。
弾丸銀河団という名称は、チャンドラX線宇宙望遠鏡(Chandra)による高温ガスの観測データに由来しています。
銀河団どうしの衝突によって引き離された高温ガスの分布が、まるで弾丸が貫通した時の様子を彷彿とさせるからです。
韓国の研究者らのチームがジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で弾丸銀河団を観測し、重力レンズ効果(※2)を分析した結果、電磁波では直接観測できない暗黒物質(ダークマター)の分布を従来よりも正確にマッピングすることができました。
弾丸銀河団の暗黒物質は目に見える物質でできた銀河に沿って分布していて、高温ガスのように引き離されてはいないことから、今も正体がわからない暗黒物質の性質に関する手がかりになる可能性があるということです。
この画像は、NASA=アメリカ航空宇宙局が2025年6月30日付で公開しています。
※1…銀河団までの距離は、天体の光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています。
※2…地球と遠方の天体の間にある別の天体の質量によって時空間がゆがみ、遠方の天体を発した光の進む向きが地球に届くまでの間に変化することで、遠方の天体の像がゆがんだり拡大して見えたりする現象のこと。銀河団による重力レンズ効果を調べると、銀河団の質量の大半を占める暗黒物質の分布を知ることができます。
【▲ ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で観測した「弾丸銀河団」の画像を背景に、チャンドラX線宇宙望遠鏡で観測した高温ガスの分布(ピンク色)と、推定される暗黒物質の分布(青色)を示した図。弾丸銀河団を構成する2つの銀河団の範囲は白色の破線で示されている(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, CXC; Science: James Jee (Yonsei University, UC Davis), Sangjun Cha (Yonsei University), Kyle Finner (Caltech/IPAC))】文/ソラノサキ 編集/sorae編集部