野党「衆院多数」の好機生かせず、主要政策はバラバラで「とても政権構想を示せる状況にない」
野党は22日に会期末を迎える通常国会で、ガソリン税の暫定税率廃止法案などで連携し、最終盤での攻勢を強めている。ただ、政権交代への構想を示せないまま、内閣不信任決議案は提出できず、衆院で多数を握っている好機を生かし切れなかった。(金山真梨、薦田大和)
記者団の質問に答える立憲民主党の野田代表(20日、国会で)「ギリギリだったが、可決に至った。参院でも審議することになったのは大きな前進だ」
立憲民主党の野田代表は20日、暫定税率廃止法案を衆院本会議で野党の賛成多数で可決させた後、国会内で記者団に、こう成果を強調した。
衆院で与党が過半数割れする中で、廃止法案は今国会で唯一、野党が結束して可決させた法案だ。自民党が法案の審議入りを拒んだとし、18日には井林辰憲・衆院財務金融委員長(自民)の解任決議を野党の賛成多数で可決。立民の委員長に差し替え、土壇場で法案を衆院通過させた。
今国会では、コメの価格高騰で国民の不満が高まる中、「コメは買ったことがない」などと発言した江藤拓農相に対し、野党がまとまって不信任案を提出する構えを見せ、石破首相による江藤氏の更迭につなげた。
野田氏は記者団に、「野党がまとまれば、ものは動くということは、はっきりした」と語ったが、野党が一致して与党に 対峙(たいじ) できた事例は限られる。
野党内で連携できた例とできなかった例2025年度予算では日本維新の会が、年金改革関連法では立民が、それぞれ賛成に回った。立民、維新、国民民主の各党が与党と個別の政策で協力し、手柄争いに走ったのは否めない。
野党が結束すれば、内閣不信任案を衆院で可決し、衆院解散や内閣総辞職に追い込むこともできたが、野田氏は19日、日米の関税交渉が続いていることや中東情勢の悪化を理由に不信任案の提出を見送った。
国民民主からは「不信任案を提出するかどうかは、野党第1党が政権構想も含めて判断し、説明すべきだ」(川合孝典参院幹事長)との意見もあったが、野田氏が動くことはなかった。原子力発電所を含むエネルギーや安全保障、社会保障など野党各党の主要政策はバラバラで、「とても政権構想を示せる状況にない」(立民幹部)ためだ。
維新内では、今後の自民との連携を模索する動きもあり、自民内からは「野党がまとまって政権交代を目指す本気度は伝わらない」(閣僚経験者)との声も出ている。