国立3戦連発でルヴァン杯MVP!! アメリカ遠征での現実に向き合う広島DF荒木隼人、過酷な連戦中も「ハードに追い込んできた」成長意欲
[11.1 ルヴァン杯決勝 柏 1-3 広島 国立]
今季の国立マッチで圧巻の3戦連発。Jリーグ屈指のエアバトルを誇るサンフレッチェ広島DF荒木隼人が先制ゴールと力強い対人守備でルヴァンカップMVPに輝いた。試合後のフラッシュインタビューでは親交の深い格闘家・梅野源治氏の代名詞を使って「YAVAY(ヤバい)だろ!」と絶叫。62,466人の大観衆を集めたビッグマッチを大いに盛り上げた。
試合を動かしたのは、劣勢が続いていた前半25分だった。右サイドからMF中野就斗のロングスローがゴール前に入ると、荒木はGK小島亨介と競り合いながらジャンピングヘッド。しっかりと頭で叩いたボールがゴールマウスに吸い込まれ、試合の行方を大きく左右する先制ゴールが決まった。
荒木は2月8日の富士フイルムスーパー杯・神戸戦(◯2-0)、5月25日のJ1第18節・FC東京戦(◯3-0)でもゴールを決めており、今季の国立競技場では3戦連発。あまりの“国立男”ぶりには「たまたまです」と謙遜したものの、今季初陣のスーパー杯で「リーグ戦、カップ戦のタイトルを取るには5点を取りたい」と宣言していたなか、自身キャリアハイの公式戦5点目を大舞台で沈めた。 ゴールシーン以外での貢献度も絶大だった。前半はマンツーマンでのプレスがハマらず、柏に何度もカウンターのチャンスを作られたが、数的不利のなかでも絶妙なポジショニングで相手の選択肢を限定。「基本的に僕はずっとハーフコートで晒されてるようなもの。特殊かもしれないけど、その環境にいすぎてそれが普通なので何も思わない」と自虐気味に話す難しい役割にもかかわらず、冷静な振る舞いでピンチを未然に防ぎ続けていた。 さらに前半はFW垣田裕暉、後半はFW細谷真大というタイプの異なるストライカーとのマッチアップを強いられるなか、後半36分の失点シーンを除けばほぼ対人で完勝。細谷に決められたゴールには「ボールを流した時にもう少し身体を寄せたり。身体をぶつけようとしたけどスライディングでボールを触りに行っても良かったかなと思う」と反省も忘れなかったが、試合を通じた存在感は絶大だった。特にカウンターを受けた局面に見られたような対応力は、今季目覚ましい成長を遂げてきた部分だ。試合後、ミヒャエル・スキッベ監督も「隼人は本当に今年すごく伸びた選手だと思う。技術面のところが非常に伸びた選手であり、1対1のところに自信を持つという部分でも非常に伸びた」と称賛を惜しまず。DF佐々木翔とDF塩谷司とのトリオで掴んだ3年ぶりのルヴァン杯制覇に「彼の成長があったから3年後もうまくやっていける部分の一つの要因だと思っている」と述べた。
もっともそんな荒木だが、来年30歳を迎えるなかでもさらなる進化への意欲は尽きない。その思いを加速させるきっかけとなったのは、今年7月から立て続けに過ごした日本代表での経験だった。
荒木は今年7月、国内組が参加するEAFF E-1選手権で3年ぶりの代表復帰を果たし、最終戦・韓国戦(◯1-0)を含む2試合の出場で優勝に貢献。続く9月のアメリカ遠征にも継続選出され、欧州組とのポジション争いに割って入った。ところが出番を与えられた国際親善試合アメリカ戦(●0-2)ではFWフォラリン・バログンに対人守備で後れを取るなど、アピールには至らず、10月の活動は再び招集外となっていた。 Jリーグでは強みとされる要素も、国際大会では弱点にもなりうるのが“世界基準”。アメリカ戦の直後には「まだまだ足りないという悔しい思いが強い。良くも悪くも現実を突きつけられた気持ち」と失意も口にしていた。その一方「強度の部分ではJリーグが上がってきているとはいえ、まだまだ足りない。一人でどうなることではないとは思うけど、自分の中で意識を高めていけば良い方向に向かっていく」とも話していた荒木。その言葉どおり、Jリーグの環境下でできる努力は続けてきたようだ。 特に重点的に取り組んできたのは下半身のフィジカル強化だった。「良いことかは分からないけど、この1か月くらいは試合があっても前日くらいまでハードに追い込んできた。今日はそうではなかったけど、苦しい中でもやるということで、課題意識を持って取り組んできたことが活かせていると思う」。J1リーグ戦、国内カップ戦、ACLEと過酷な連戦が続いていたなかでも継続してきた積み重ね。道半ばとあって「結果に出ているかというとまだ難しいところ」という冷静な見方も口にするが、「決勝でこうして戦って点を取れたのは嬉しい気持ちがある。ポジティブにつなげていきたい」とこの栄誉は一つの成功体験にしていく構えだ。 その先にはもちろん広島での次なるタイトルや、来年夏の北中米W杯を見据えている。「もっとスピードとパワーをつけたいし、ビルドアップもしっかり取り組んでいきたい」。36歳の大ベテランCBに囲まれ、着実に力をつけてきた大卒7年目の29歳。Jリーグ屈指のCBと評されるようになった今も、その成長を止めるつもりはない。 (取材・文 竹内達也)●ルヴァン杯2025特集▶話題沸騰!『ヤーレンズの一生ボケても怒られないサッカーの話』好評配信中