サメが多い海洋保護区と少ない保護区の重要な違いが明らかに、熱帯の東太平洋の調査で判明(ナショナル ジオグラフィック日本版)
熱帯の東太平洋に設けられた7つの海洋保護区(MPA)でサメについて調べたところ、大陸から遠く離れた海洋島の、漁業に対する厳しい取り締まりが行われているエリアでは大いに繁栄している一方、沿岸に近く漁業が盛んなエリアでは著しく減っていることが明らかになった。この結果は、同じ「保護区」であっても、すべての場所が同じように守られているわけではない事実を示している。論文は2025年11月26日付けで学術誌「PLOS One」に発表された。 ギャラリー:恐ろしくも美しきサメ、10選 「サンゴ礁の管理者」として、サメは生息地を健全に保つ役割を担っていると、論文の筆頭著者で、国際NPO「チャールズ・ダーウィン財団」の空間生態学者であるサイモン・マッキンリー氏は言う。病気や過剰に増えた魚を食べるおかげで、特定の種が生態系を独占するのを防いでいるのだ。 現在、世界各国が、国連の掲げる「2030年までに海洋の30%を保護する」という目標に向けて取り組みを進めている。だが、論文の著者らは、具体的な効果をもたらす保護施策を行いたいのであれば、海洋保全の指導者らは、この違いを考慮する必要があると述べている。今回の研究はナショナル ジオグラフィック協会の「原始の海(プリスティーン・シー)プロジェクト」から資金を提供されて行われた。
海洋保護区(MPA)とは国立公園のような存在であり、人間の活動がどの程度許されるかについて、さまざまな規則が設けられている。たとえば、コロンビアのマルペロ動植物保護区のような完全保護区域では、人間による一切の活動が禁じられている。一方、エクアドルのガレラ・サンフランシスコ海洋保護区のように、漁業が許可されている保護区もある。 こうした規則の違いがサメにどのような影響を与えているのかを知るために、研究者らは、エクアドル、コスタリカ、コロンビア、メキシコに点在する7つの海洋保護区の水深20〜24メートルの深さに、サメを害さないビデオ装置を少なくとも100分間にわたって設置し、こっそりとサメたちを観察した。 水中カメラは「餌付き遠隔水中ビデオシステム(BRUV)」と呼ばれる装置で、油分の多い魚が仕掛けられている。研究者らは、おいしそうな餌を目当てに集まってくる生きものたちを数えた。 ガラパゴス諸島、マルペロ島、クリッパートン島、レビジャヒヘド諸島といった漁業が禁じられている、あるいは厳しく制限されている到達困難なMPAにおいては、一貫してサメが数多く観察されるとマッキンリー氏は言う。 一方、マチャリリャ、ガレラ・サンフランシスコ、カーニョ島といった人間の活動域に近い沿岸地域の様子は大きく異なっている。これら3つのエリアを調べた結果、「沿岸部で30回以上カメラを設置したにもかかわらず、観察できたサメはたったの4匹」だったという。 コスタリカのカーニョ島は、法的には漁業が禁止されているが、境界内での違法な操業が確認されている。 沿岸に近いエリアでは、サメは生息地の破壊、汚染、沿岸漁業など、さまざまな人間活動による影響を受けるリスクが高い。「沿岸で漁をする方が、沖に出るよりも簡単で安上がりです」と、米スタンフォード大学ホプキンス海洋研究所の研究員サマンサ・アンドレジャゼック氏は言う。なお、氏は今回の研究には関与していない。 研究では、法が適切に施行された沖合の禁漁区では、カメラに映るサメもほかの魚も多いことが示されている。 「こうした高度に保護されたMPAは、われわれが過去50年間、いや100年間にわたってせっせと駆逐してきた大型魚類の回復に、多大な効果を発揮します」と、英ブルーマリン財団の保全責任者ローリー・ムーア氏は言う。なお、氏も今回の研究には関与していない。 生態系が健全であるかどうかに重大な影響を与えたものが何なのかは明らかだった。漁業だ。 「漁業を許可している海洋保護区は、うまく機能しません」と語るのは、同研究の共著者であり、「原始の海プロジェクト」を創設したエンリック・サラ氏だ。ナショナル ジオグラフィック協会のエクスプローラー・イン・レジデンス(協会付き研究者)でもある氏によると、漁業から完全に守られているのは「世界の海のわずか3%」だという。