最大9連休の年末年始は「空き巣」注意 “狙われやすい家”の共通点とは? 元刑事が教える旅行&帰省前に徹底したい「防犯対策」
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- 2025.12.26
- 著者 : 治安戦略アナリスト・危機管理スペシャリスト 小比類巻文隆
- アドバイザー : 小比類巻文隆(こひるいまき・ふみたか)
忘年会、クリスマス、帰省準備…イベント続きで外出が増え、家を空ける時間が多くなる12月。空き巣の犯行が増える時期の防犯対策を元警視庁刑事の筆者が解説します。
年末が近づくと、外出や帰省が増え、家が空く時間が長くなります。実はこの時期、侵入窃盗、いわゆる「空き巣」が毎年増加する傾向にあります。警察庁がまとめた令和6年(2024年)の犯罪統計によると、侵入窃盗の認知件数は4万3036件。ピーク時の2002年の約33万件より大きく減ったとはいえ、1日当たり約118件の住宅が侵入されている計算です。さらに、空き巣の検挙率は2024年で57.8%。防犯カメラなどのハイテクな対応策が増えても「半分近くは捕まらない」という現実が、空き巣の根強さを物語っています。
さらに近年は、宅配業者を装ったり、窓ガラスを破壊して押し入ったりするなど、空き巣の発展系とも言える悪質な侵入強盗事件も連続して発生しています。
実際の例として、静岡県長泉町では12月22日未明、複数の男が店舗兼住宅に押し入り、80代の夫婦の手首と口をテープで縛った上で、店舗内にあった現金1000万円を奪う強盗事件が発生しました。
自分や家族の安全を守るためには、まずは家に侵入させないこと。日常生活の中で防犯意識を高めることが不可欠です。特に年末は、空き巣にとっても狙いやすい季節。そんな侵入犯罪の現状と、今日からできる防犯対策について、元警視庁刑事の経験を持つ筆者が解説します。
空き巣の多くは、窓や玄関から侵入します。特に多いのが「無締り」、つまり鍵の掛け忘れです。在宅中でも、少しの油断で鍵を開けたままにしていることがあります。しかし侵入者は、そうした心の“スキ”を逃しません。どれほど高価な防犯設備を備えていても、鍵が開いていれば意味がありません。警察庁も「外出時はもちろん、在宅中でも無人の部屋の窓は施錠を」と呼び掛けています。
窓ガラスを破って侵入する「ガラス破り」も依然として多く、部分的な防犯フィルムでは効果が不十分とされています。ガラス全面に施工することが推奨されており、簡易的な対策では安心できません。
空き巣は行き当たりばったりではなく、犯行前に下見(偵察)を行います。その際チェックしているのが、次のポイントです。
・在宅時間の規則性 ・窓や玄関の死角の有無 ・敷地内に入りやすいかどうか ・地域住民の通行頻度やあいさつ習慣 ・郵便物のたまり具合
・ゴミ出しルールが守られているか
特に、あいさつの習慣がある地域は、侵入者が嫌います。「このエリアは見られている」と感じるだけで、犯行を諦めるケースが多数なのです。地域のあいさつや声かけは、最も手軽で効果的な防犯の一つです。
空き巣は侵入する家の選定を、“5分以内に入れるかどうか”を基準にしています。
・5分以上かかる→約7割が断念 ・10分を超える→ほぼ諦める
だからこそ、侵入までの時間を稼ぐことが大切です。
ここで大きな効果を発揮するのが、防犯性能の高い建物部品「CP部品」です。防犯ガラスや防犯サッシ、補助錠、シャッター、面格子など、警察庁と関係省庁が共同認定した部品で“CPマーク”を基準に選べば間違いありません。
警察庁が推奨する、誰でも今日からできる防犯行動をまとめると次の通りです。
・在宅時でも玄関、窓の施錠を徹底する ・訪問者はインターホン越しに確認し、すぐにドアを開けない ・宅配業者の偽装に備え、宅配ボックスを活用する ・帰宅時は背後に不審者がいないか確認する ・敷地や庭を整理し、死角を減らす ・玄関はツーロックにし、窓には補助錠を設置する ・防犯カメラやセンサーライトを外から見える場所に設置する ・長期不在時は郵便物を止め、近隣に声を掛ける ・合鍵は家の外に絶対に置かない
・不審を感じたら迷わず110番通報する
大切なのは、特別な設備より“日常の習慣”。空き巣の多くは、生活の油断を突いて侵入するのです。
逆に、侵入されやすい家には共通点があります。
・門扉がなく、敷地に自由に入れる ・庭木が茂り、窓が外から見えにくい ・2階への足場になる物置や室外機がある ・夜間でも暗く、死角が多い ・郵便物がたまっている
・窓周りに砂利がなく、侵入しても音が出ない
「見られる」「音が出る」環境づくりは、想像以上に強力な防犯効果があります。
年末は外出や旅行が増える時期であり、空き巣被害が集中しやすい季節です。郵便受けに新聞や郵便物がたまっていると留守が一目で分かります。旅行や帰省の際は新聞を止めるなど、留守を悟られない工夫が必要です。
また、インターホンを鳴らして留守を確認することがあります。もし在宅時にインターホンに出て応答がなかった際は、周囲に不審者がいないか確認し、不審を感じたら迷わず110番をしてください。こういった心掛けだけでも、空き巣に狙われる確率は大幅に下がります。
空き巣は、防犯意識の高さがそのまま被害率に反映される犯罪です。空き巣対策に必要なのは、毎日の注意意識と防犯習慣です。今日からの“ほんのひと手間”が、ご自身と家族の安全を守ります。安心して新しい年を迎えるために、ぜひ実践してみてください。
(治安戦略アナリスト・危機管理スペシャリスト 小比類巻文隆)
【要注意】「えっ…」 これが空き巣犯に“狙われやすい家”の特徴です!(画像6枚)
元警視庁警部補/治安戦略アナリスト・危機管理スペシャリスト
30年にわたって警察官として勤務し、危機管理の第一線を歩んできたスペシャリスト。1993年に警視庁へ入庁後、爆弾処理班を経て中国語通訳捜査官、さらに国際捜査官として、銃器・薬物犯罪を中心に情報収集や秘匿捜査、海外組織による密輸入事案の解明に従事。殺人・強盗・誘拐など重大事件の捜査本部にも多数参加。2023年に退官後は、警察での実践経験を社会に還元すべく、講演や執筆、メディア対応など幅広く活動中。現場のリアルを伝える、数少ない治安専門家のひとり。note「沈黙のリアル」(https://note.com/coffy_agent)
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