豪州への「もがみ」型護衛艦輸出、緊張高まる太平洋地域に及ぼす影響は?

豪州が計画している汎用フリゲート艦の完成予想図。就役は2030年になるとみられている/Australian Department of Defence

(CNN) 豪州政府は5日、豪海軍が導入を計画している新型艦をめぐり、日本製の最新鋭の護衛艦を採用すると発表した。総額65億ドル(約9500億円)を見込む。この動きは、豪州を太平洋の海洋大国に、日本を主要な武器輸出国へと押し上げる契機になり得るとアナリストらは指摘している。

豪国防省は、新型艦11隻の調達計画に際し、ステルス性能に優れた日本の「もがみ」型護衛艦(FFM)を導入すると明らかにした。アナリストらによると、このFFMは中国や米国が運用する艦艇に匹敵、あるいはそれ以上の性能を有する可能性があるという。

コンロイ国防産業相は「同盟国に安心感を与え、敵対国を抑止するステルス性能を備えたフリゲート艦の保有は、海軍力の増強に向けた新たな一歩だ」と評した。

豪州にとって安全保障上の最大の懸念は、近隣地域で拡大する中国との勢力争いにある。今年初めには、中国海軍の艦隊が豪州を周回し、同国沖で実弾演習を実施。これにより民間機が航路変更を余儀なくされる出来事があった。

豪州政府によると、導入されるのは海上自衛隊が配備するもがみ型の改良型。火力が強化され、無給油で航行可能な航続距離が約1万8500キロ(赤道の約半周)に延伸される。

NHKの報道によると、中谷元・防衛相もコンロイ氏と同様の見解を示し、特別な戦略的パートナーである豪州との安全保障協力をさらなる高みに引き上げる「大きな一歩」だと強調した。

強力な兵装

三菱重工業が建造する新型FFMは、対空・対艦ミサイルを発射するMk41垂直発射装置(VLS)を装備し、発射セルは32基。防空ミサイル128発が発射可能で、現在の豪水上艦の発射可能数の4倍であるとコンロイ氏は述べた。

アナリストらは、米ロッキード・マーチン製のMk41は、射程約1600キロのトマホーク巡航ミサイルを搭載できるほど十分な大きさがあるとして、艦艇の攻撃範囲は大幅に拡大し得ると指摘する。

また長距離対潜ロケットの発射にも使用可能で、原子力潜水艦を追尾する能力が向上すると、英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の研究員、シッダールト・カウシャル氏は述べた。

豪州が日本から購入を計画しているフリゲート艦の完成予想図/Australian Department of Defence

日本製の新型FFMは、乗組員が少数で済む点も評価されている。豪州で就役中のアンザック級フリゲート艦は170人の乗組員を要するのに対し、新型FFMはわずか90人で運用できる。乗組員の少人数化は、軍の人員不足が課題となっている日本や豪州などにとって重要である。

「より大型の艦艇でありながら、より少ない乗組員で運用できるというのは、この艦がいかに近代的であるかを物語っている」(マールズ豪副首相)

敵対国との対峙

アナリストらは、もがみ型の性能が、この地域の他のフリゲート艦と比較して遜色がないと評価。受注を競っていたドイツ案ではなく、日本案を採用した豪州の決定を称賛した。

「ステルス性、乗組員の少数化、モジュール性、すべてが比較的手頃な価格で実現しており、極めて競争力のある製品だ」と英ロンドン大キングス・カレッジのアレッシオ・パタラーノ教授(戦争学・東アジア戦略学)は述べた。

米海軍退役大佐で、米太平洋軍統合情報センターの元責任者カール・シュスター氏は、もがみ型が中国の054B型フリゲートよりも「わずかに優れている」として、中長距離防空システムを特に高く評価した。

「中国艦と比較すると、もがみ型は敏捷(びんしょう)で、より技術的に進歩した解決策だ」とパタラーノ氏は語った。

カウシャル氏は、もがみ型に搭載された目に見えない技術、つまりソフトウェアこそ、戦闘において火力以上に差を生む可能性があると指摘。例えば、もがみ型のソナーソフトウェアは、海中の雑音と実際の敵の接触を区別する能力において優れている可能性があると述べた。

また、日本の産業的な信頼性を評価する声もあった。

「日本の造船所は卓越した仕事をし、製品を期限内かつ予算内で納入する」(シュスター氏)

「もがみ型は最先端である。日本が長年にわたり培ってきた高品質なパイプライン方式の造船技術と、国内および米国由来の先進技術への明瞭なアクセスを基盤としている」とパタラーノ氏は述べ、現行のもがみ型は英国製エンジンを搭載していると言い添えた。

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