若い世代のHPVワクチン接種率向上へ キャッチアップ動画の介入効果を検証

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横浜市立大学医学部産婦人科学の 宮城悦子教授、吉岡俊輝医師(大学院生)、公衆衛生学の後藤温教授らの研究グループは、 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを未接種の18~26歳女性に対して、同世代の女性が友人との会話を通じてキャッチアップ接種*1を薦める約1分間の動画視聴が、接種率に及ぼす効果を検証するランダム化比較試験を実施しました。 その結果、動画視聴の有無により明確な接種率の違いは認められず、動画視聴の有効性は示されませんでした。 本研究成果は、同世代の女性による接種勧奨を行うショート動画の視聴のみでは、キャッチアップ接種を促すには十分ではないことを示唆しており、国や自治体等が若年女性に対する効果的な接種推進策を設計する際に役立つことが期待されます。 本研究成果は、国際学術誌「The Journal of Medical Internet Research」に掲載されました(2025年8月15日公開)。
● Z 世代*2を含む若年女性において、HPVワクチンキャッチアップ接種を勧奨するショート動画視聴によるキャッチアップ接種率に対する有効性は示されなかった。 ●  一方で、高い教育歴や過去2年間の子宮頸がん検診受診がキャッチアップ接種率と関連する要因として、同定された。 ●  社会的な背景やニーズを考慮した、効果的な対策を検討することが重要である。
わが国では、2013〜2022 年の HPV ワクチン積極的勧奨の一時中止によりHPVワクチン接種率がほぼゼロに低下し、多くの女性が接種機会を逃しました。2022年に積極的勧奨が再開されたことを受け、接種機会を逃した世代へのキャッチアップ接種を推進することが急務となっています。本研究は、HPV ワクチン勧奨差し控え期間に未接種であった女性を対象に、動画を用いた介入がキャッチアップ接種率に与える効果を評価し、さらに接種行動に関連する要因を探索しました。
本研究では、インターネット調査パネルから HPV ワクチン未接種の 18〜26 歳女性を登録し、①短編動画+解説パンフレットを配信する介入群と、②パンフレットのみの対照群へ無作為に割り付けました。3カ月後にオンライン追跡調査を行い、自治体の無料キャッチアップ接種を1回以上受けたかを自己申告で確認した結果、解析対象の介入群 1,017 人中 107 人(10.5%)、対照群 993 人中 121 人(12.2%)が接種しており、両群に有意差は認められませんでした。一方で、年齢が高いこと、短大・大学以上の教育歴を有すること、過去2年以内の子宮頸がん検診の受診歴があることは、キャッチアップ接種率と関連していました。本研究では、インターネット調査パネルから HPV ワクチン未接種の 18〜26 歳女性を登録し、①短編動画+解説パンフレットを配信する介入群と、②パンフレットのみの対照群へ無作為に割り付けました。3カ月後にオンライン追跡調査を行い、自治体の無料キャッチアップ接種を1回以上受けたかを自己申告で確認した結果、解析対象の介入群 1,017 人中 107 人(10.5%)、対照群 993 人中 121 人(12.2%)が接種しており、両群に有意差は認められませんでした。一方で、年齢が高いこと、短大・大学以上の教育歴を有すること、過去2年以内の子宮頸がん検診の受診歴があることは、キャッチアップ接種率と関連していました。   結論として、本研究は、デジタルネイティブである Z 世代を含む若年女性において、ショート動画の視聴がキャッチアップ HPV ワクチン接種率に大きな影響を与えなかったことを示しました。一方で、個人の背景によって接種率が異なる可能性が示唆されました。社会的な背景やニーズを考慮した、効果的な対策を検討することが重要です。
図1 3カ月後のキャッチアップ接種率の比較
今回の研究では、接種勧奨に関するショート動画視聴の介入による、キャッチアップ HPV ワクチン接種率に対する有効性は確認できませんでした。デジタルネイティブである若年層の意思決定に対してどのようなアプローチが効果的であるか、さらなる研究により検証する必要があります。
本研究は、The Karen Leung Foundation、日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業(課題番号:24ck0106811h0002)の支援により実施されました。 
Web-Based Video Intervention and Associated Factors for the Uptake of the Catch-Up Human Papillomavirus Vaccination in Japan: A Randomized Controlled Trial 著者:Yoshioka T, Goto A*, Mizushima T, Suzuki Y, Ueda Y, Yagi A, Sekine M, Kudo R, Garland SM, Kumaresamy S, Ismail-Pratt I, Reimer K, Miyagi E. (*責任著者) 掲載雑誌:The Journal of Medical Internet Research

DOI:10.2196/67778

 
*1 キャッチアップ接種:キャッチアップ接種とは、本来の推奨年齢でワクチンを受け損ねた人が、後から追いつく形で接種できる制度を指す。公費(自治体負担)や費用助成が設けられることで、経済的な負担を軽減し、感染症から身を守る機会を平等に確保することが目的とされる。今回の HPV ワクチンでは、2013~2022 年の勧奨差し控え期間に接種機会を逃した女性を対象に、2022 年度から無料で接種できるキャッチアッププログラムが始まりまった。 *2  Z世代:Z 世代とは、一般に 1990 年代後半から 2000 年代前半に生まれた世代を指し、幼い頃からインターネットやスマートフォンに慣れ親しんできた「デジタルネイティブ」として知られている。 <The Karen Leung Foundationについて> カレン・リョン財団は、婦人科がんの影響を軽減することで命を救うというビジョンを掲げ、2013年に設立されました。婦人科がんに関する意識向上、地域社会への予防と早期発見の促進、そして治療中の女性が最適なケアを受けられるよう支援することで、社会貢献活動を行い、国内外の医療コミュニティや女性の健康向上に取り組むNGOと協力しています。
横浜市立大学 広報担当 mail:[email protected]

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