「おでこや頬の骨が、ない」“世界でも珍しい障害”を持つ3歳男児『おもちくん』が経験してきた“数々の手術”と、両親の想い「あなたがいて幸せって、伝えたい」

 世界でも前例のない障害を持つ息子・未来くん(YouTube上では「おもちくん」)の日常をYouTube「星のミライChannel」で発信する星野しほさん、孝輔さん夫妻。まぶたと頭蓋骨の一部がない状態で生まれ、小耳症や小顎症、嚥下障害といった症状も抱える未来くんは、生まれたその日に気管を切開し、生後100日で「まぶたを作る手術」を受けた。

 成長を続ける中で、今後もさまざまな手術を受ける可能性があるという。わが子の「病名のない障害」に向き合うことになった星野さん夫婦の意外ななれそめから、今後の未来くんの治療などについて聞いた。

生後1カ月のころ、お昼寝中の未来くん。このときはまだまぶたの形成手術前で、眼球が乾かないようにラップを貼ってケアしていた(写真提供=本人)

ゆくゆくは、再び「まぶたを作る手術」が必要になる可能性も

――この取材中もご機嫌で遊んでいる未来くんですが、いやいや期はありました?

星野孝輔さん(以下、孝輔) 思いどおりにいかないことが続くと一瞬、ウワーッと怒ることはあったりはしますけど。

星野しほさん(以下、しほ) それが癇癪になって、「イヤーッ!」ってずっと泣いて、とかってことは意外とないよね。

――本当に穏やかといいますか。

しほ 本人の性格なのか、もしかしたらてんかんの薬も飲んでいるので多少、感情が抑えられている可能性はあるかもしれないです。

 YouTubeで見てくれている方から、「笑ったり泣いたりしますか?」と聞かれることがあるんですけど、普通の人には表情が読み取りづらいのはあるかもしれません。気管切開していて基本的に声も出ないので。

孝輔 僕らは顔を見るだけでみーくん(未来くん)の感情はわかるんですけどね。

©杉山秀樹/文藝春秋

――これから予定されている治療はありますか。

しほ 目に関しては定期的に受診して、乾燥が進んできているとなったら、ケアを増やすか、まぶたの再手術をいずれする可能性があるというのが1つ。

 あと気管切開に関しては、口から呼吸ができるようにならない限り器具を外せなくて。で、口鼻で呼吸ができるようにするためには、顎の手術が必要なんです。

――小顎症でもあるということでしたよね。

しほ そうなんです。みーくんの場合、顎の縦の骨と前側に伸びる骨、そのどちらもかなり短いと言われているので、手術となると、あばらの骨などを移植して延長する大掛かりな手術が必要と言われています。

 それが成功して、気道を狭めている舌根沈下が治って呼吸が安定したら、いずれ気管切開も卒業できる見込みがあります。ただ、時間はかかる話です。

 あとは頭蓋骨の部分ですね。


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――頭頂部からおでこのあたりと、頬骨が欠損しているということでした。

しほ その骨がまるっとないところに関して、まず額の部分なんですけど、頭蓋骨って2層になっているそうで。その1層をスライスして前に持ってこれるのではないか、という話を聞いています。

 ただそれも、しっかりした2層状になるには時間がかかるので、骨の成長を待ちながら様子を見ているところです。

 この頭の骨の話をすると、人工骨とか代用できるものを入れられないのかとよく聞かれるんですね。

――人工物で代替できないかと。

しほ みーくんの場合は欠損している範囲が広すぎて、細菌感染とかが危ないらしいんですよね。だから、人工のものを入れるのはあまり現実的ではないと。

 あと、子どもの頭はどんどん大きくなるので、人工骨のサイズが成長に追いつかなくなってしまうということもあり、自分の骨で欠損部分を補えるようになるまで、もうちょっと骨がしっかりする5歳以降から検討を始める予定です。

 嚥下についても、ゆっくりと上達はしてきていて。今年度は、水分を少しずつお口から飲めるよう、吸い飲みを使えるようになるのが目標です。で、学校に入るまでには、少なくとも水分は口から取れるようになっているといいね、と話をしています。

©杉山秀樹/文藝春秋

――嚥下機能が向上すると胃ろうも取れるんですか。

しほ 今の感じからして嚥下が上達しているとは言われています。本人が今後、ごっくんをしなきゃいけないという理解が進むことも含めて、いずれはお口から食べられるようになるんじゃないかと。

――元気に動くこともあって、骨のない頭部がぶつからないかハラハラしませんか。

しほ 私たちはみーくんの行動パターンをわかっているし、例えばクッションフロアに頭をくっつけてグリグリしていたとしても、この程度は大丈夫、とかは何となくわかりますね。それこそフローリングでやっていたらちょっと心配にはなりますけど、これぐらいは大丈夫だなというのは生活の中でわかってきた感じです。

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孝輔 みーくんは結構臆病なので、前から倒れたりということが今までないんですよ。

――慎重なタイプなんですね。

しほ 慎重なのもあって今のところは大丈夫だという判断ですけど、だからといって絶対大丈夫という保証もないので、必ず目は離さずにいます。

孝輔 旅行先とか、僕らも慣れない場所ではヘルメットも使ってガードするようにしています。


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――夜はしほさんが担当ということでしたけど、晩酌とかで息抜きってできますか。

しほ 子どもができてからはほとんど飲まなくなりましたね。みーくんと2人きりのときに身動き取れなくなったら大変なので、飲むとしてもパパもいる時にしか飲まないし、ちゃんと片方が見られる態勢は常に作ってはいます。

――しほさんは時短で在宅勤務、孝輔さんは正社員を辞めてフリーランスにシフトと、育児のためにライフスタイルも大きく変化させましたが、お互い葛藤はなかったですか。

しほ 仕事は楽しんでやっていたんですけど、私の野望というか、ひそかな計画として、妊娠して産休に入る前にできるだけ上のポジションについておこうと考えていたんですね。

――育児に入った後のキャリアを考えて?

しほ もともと私は家庭に重きを置きたいタイプでして。仕事は頑張ってたけど、子どもができたらそれまでと同じ熱量で仕事はできないだろうと。だったら、妊娠前にできることを全部やってキャリアを積んでおこうと思ったんです。ぶっちゃけていえば、上に行けば行くほどもらえる手当も違いますしね。

 そうして頑張っていたらありがたいことに出産前に管理職になれたんです。

――もともと家庭を持ちたいという思いが強かったんですね。

しほ 家庭へのあこがれは昔から強くて。専業主婦の母を見て育ったこともあるかもしれませんが、金銭面が許すなら子どもはできるだけたくさん欲しいと思っていました。

――逆に孝輔さんはいかがですか?

孝輔 自分の収入だけでこの家の家計が全部回って、妻がのぞむかたちで育児をしてもらえたらいいなと思っていました。

しほ 今の時代に珍しく、彼はちょっと関白なところがあって。でも、私もそのスタイルを望んでいたので、うまくマッチしたなと思ってます。

――お2人は6歳差ということですが、出会いは?

孝輔 大学入学前にゲーム実況をしていて、そのリスナーが彼女だったんです。

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――しほさんもゲーム好きなんですか。

しほ 「2BRO.」っていう好きなゲーム実況者がいて、その実況者さんは声が特徴的なんですけど、彼がその声真似をしてたんですよね。

孝輔 高校生だったのでちょっと恥ずかしいんですけど(笑)。

しほ 「全然視聴者がいないのに声真似してる、この人めっちゃ面白い」と思って(笑)。で、一緒に配信をするようになったりして仲良くなったんです。

孝輔 僕が大学1年生の時に付き合い始めて、新卒で入社してまだ研修中とかの時期にプロポーズして結婚、という感じでした。

――周りに比べてもかなり早い結婚だったのでは。

孝輔 メチャクチャ早かったですね。「研修中にプロポーズしたやつがいる!」と、社内でも話題になりました(笑)。

 ただ、6つ上の女性とお付き合いするとなった段階で僕としては軽い気持ちではなかったので、「結婚を前提にお付き合いします」と最初から彼女に言ってたので、自然な流れではありましたね。


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――未来くんになんらかの障害があるとわかった際、お互いに見直した点とか、意外だったことはありますか。

しほ もともと彼は、「人と違えば違うほどいい」という考えを持っている人で。赤ちゃん自身は元気であるものの、見た目にかかわる障害がありそうだとわかったときに、「違いなんて活かしようだし、むしろ俺のところに来てくれてよかったと思う」みたいなことを言っていたんですよね。

 私自身は、いじめられたらどうしようとネガティブなことを考えて心配してしまうタイプなので、夫が私とは真逆のスタンスだったことが安心につながりました。とにかく前向きな人なんです。

孝輔 彼女は、「病気を持った子どもたちは全員私のもとに来てほしいと思っている」みたいなことを言っていて、聖母かなって思いました(笑)。

しほ ちょっと語弊がある気がするけど、それぐらいドンと構えられるオカンになりたい、みたいなことは言ったかな。それでも気持ちに波はあって。一番大きな波は、「周りに受け入れてもらえるだろうか」ということでした。

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――障害のある子を家族や周りが受け入れてくれるか心配になった?

しほ 特にうちの両親は受容に時間がかかったんです。とにかく「しほが心配」という感じで、「この間の検査ではどうだったの?」と聞かれて、こういうことが判明したと伝えると、「はぁ」みたいなことがしばらく続いていて。

 そんな最中に、姉に子どもが生まれたんです。会いに行ったら、生後1カ月のかわいい新生児と、てんやわんやしている姉夫婦と、孫がかわいくて仕方がない両親とで、愛があふれる空間があって。

 楽しく過ごしたはずなのに、その日の帰り道は想像以上にダメージがあって、あんな風にうちの子は受け入れてもらえるのだろうかと、ものすごく不安になって号泣しちゃったんです。

――そうだったんですね。

しほ で、私がひとしきり彼に不安を打ち明けた後、夫が、「結婚式のときを思い出すな」と言い出して。私たちはコロナ禍で結婚式が何回も延期になって、規模もどんどん縮小されていって。

 あのときも私は「もう結婚式やめちゃおうかな」ぐらいに思って泣いていたけど、彼がいろんなアイデアを出してくれて、結果的に素敵な結婚式になりました。その時みたいに、今日の悲しかったことは育児を受け入れるために必要なステップであって、パパとだったらどんな育児でも乗り越えられるかもしれないと思えたんです。

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――孝輔さんはとても前向きな方ということですが、それ故に、「こっちはこんなに悩んでいるのに!」とか「何も考えてないんじゃない?」みたいに思うことはなかったですか。

しほ 最初はありましたね。初めてリスクを指摘されたときも、あまりに心配するそぶりがなさ過ぎて(笑)、本当にドンと構えているタイプなのか、全然興味を持ってくれない人なのかわからなくて、一瞬ケンカになったこともありました。

 でも、結果的にパパは本当に前向きに対処できる人なんだということがわかったので、安心してます(笑)。


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――そして3人家族になり、未来くんは人気YouTuberになりつつあります。

しほ 近所のショッピングモールに行くと必ず1回は声かけてもらっているよね。

――「おもちくんですか?」みたいに声をかけられる?

孝輔 そうですそうです。ありがたいよね。ディズニーランドに行ったときは4、5回声をかけられました。

しほ そういうリアクションをいただけると私たちとしても励みになりますし、みーくんにとっても「よかったね。かわいいって言ってくれたよ」みたいな、嬉しいことが増えるなって。

――今日はじめて未来くんにお会いできましたが、YouTubeの画面で見るよりも本当に元気でかわいくて。

しほ そうなんですよ。実際に本人を見ると本当にかわいいんですけど、写真だとインパクトが強いので。

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孝輔 帝王切開の日、「産まれた」と病院から連絡があって妻の産室に向かうとき、普通の子育てをしている家族が目に入ったんです。でも未来くんは違うじゃないですか。そのときに、「うちの子は特別だ。よっしゃー!」って感情が一番に湧いてきたんですよね。本当に特別な子なんです。

しほ 彼のそういうところが本当に面白くて。小学生ぐらいの男の子で、怪我して包帯巻いてイキってる子っていたじゃないですか。

――ありますよね。眼帯を誇らしく思ったり。

孝輔 それに近いかもしれないです。

しほ ほんとそういう感じの人だから今幸せに子育てができてるんだなって思ってます。

――一方でしほさんは心配性だというお話もありましたが、病名がわからないという意味で、今不安はないですか。

しほ 今はそこまで気にしてないんです。たしかに、病名がわからないからどんな発達をするかもわからないんですけど、何かあったらその都度ちゃんと対応していこうという気持ちです。

©杉山秀樹/文藝春秋

 きれいごとと言われるかもしれませんが、YouTubeの発信などで、みーくんが生きやすい社会を作っていくこと、あとはみーくんに毎日「あなたがいて幸せ」ってことを伝えていくことが大事かなって思ってるんです。

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