キーホルダー型の本物Wii「Kawaii」が60×60mmで完成!GameCubeを実機動作、エミュレーション一切なし
モッダーチームのYveltalGriffin氏・Wesk氏・Ding氏の3名が、本物のNintendo Wiiマザーボードを60×60×15.8mmまで切り詰めてキーホルダー型筐体に収めたハードウェア「Kawaii」を完成させました。Macho Nacho ProductionsのTito氏によるハンズオン動画が2026年5月初旬に公開され、エミュレーションを一切使わずGameCubeのフルタイトルが動作する様子が確認できます。設計データはGitHubで100%オープンソース公開されており、Wiiポータブル化モッディング界の到達点として注目を集めています。本稿では、Omega trimとThundervoltを軸とした技術的構成、既存の最小Wii「Short Stack」との立ち位置の違い、レトロハードウェア愛好家にとっての価値を整理します。
60×60×15.8mmのCNC削り出し筐体に、本物のWiiマザーボードを丸ごと収納
Kawaiiは、青色アルマイト処理されたアルミニウム製ユニボディを採用。サイズは60×60×15.8mmで、ゲームボーイカラーのカートリッジ程度のフットプリントに収まります。背面にはレーザーエッチングによるロゴと「フェイクの認証マーク」が刻印され、アクリル窓越しに内部のRGB LEDが発光します。
中身は、Wiiマザーボードを「Omega trim」と呼ばれる手法で極限まで切り詰めたもの。カスタムIBM PowerPC CPU(コードネーム「Broadway」)とATI製GPU(同「Hollywood」)を残し、それ以外のPCB領域はほぼ削除しています。NANDメモリチップは「nandFlex」と呼ばれるフレックス基板で基板裏面に再配置され、映像出力周りも「AVE Flex」フレックス基板で基板下にサンドイッチ収納されています。これらの周辺基板はいずれもYveltalGriffin氏自身が設計したオープンソースモッドです。
電源系統は「Thundervolt」と呼ばれる電圧降下基板でCPUのアンダーボルトを実施。発熱を抑えつつ、純正の外部ACアダプターに頼らない給電を実現しています。冷却はパッシブ方式のみで、CNC削り出しのアルミ筐体そのものがヒートシンクを兼ねる設計です。
ゲームデータはmicroSDカードに保存されますが、SDスロットは内部基板上に実装されており、筐体を組み立てるとカードは取り出し不可(captive)になる仕様です。ゲームの追加・差し替えには筐体の分解が必要となるため、コレクション運用には事前のライブラリ構成が前提となります。
「世界最小のWii」を巡る議論——Short Stackとの違い
Wiiの極小化を巡っては、loopj氏(James Smith氏)が2024年に発表した「Short Stack」が「世界最小の自己完結型Wii」のタイトルを保持しています。Short Stackは62×62mmのOmega trim基板を採用し、HDMI出力(GCVideo経由)、USB-C給電、GameCubeコントローラー入力(3.5mmジャックアダプター経由)を本体に内蔵。トランプデック程度のサイズで完結します。
これに対しKawaiiは線形寸法で60×60×15.8mmとさらに小さいものの、本体に外部ポートを一切持たず、底面の12ピン磁気ポゴピンコネクタが電源・映像・コントローラー信号のすべてを担います。レトロハードウェア向けのMagSafe的な構造です。AV出力やコントローラー入力には別売の拡張ドックが必須で、ドックにはフルサイズのGameCubeコントローラーポート4基、コンポジット/コンポーネント映像出力、ステレオ音声出力、USB-C給電が実装されています。HDMI出力は搭載されていませんので、現代のテレビやモニターに接続する場合はアップスケーラーやコンバーターが別途必要です。
このため、Kawaii自身のGitHub READMEでも「世界最小の機能するWiiであるかは議論の余地があり、自己完結型としてはloopj氏のShort Stackが依然として最小」と明記されています。Kawaiiは「実用機」ではなく「ポータブル化を工芸として極めた美術品」としての性格が明確に打ち出されている点が、Short Stackとの設計思想上の最大の違いです。
互換性に関しては、Wiiの後方互換機能を活用しているためGameCubeライブラリに対する互換性は100%となります。エミュレーションのフレーム落ち、テクスチャグリッチ、入力遅延といった一切がなく、Tito氏の動画では『マリオカート ダブルダッシュ!!』『クレイジータクシー』が滑らかに動作する様子が確認できます。ただしパッシブ冷却の限界は明確で、外部ファンを当てない場合は安全機構が作動して約20分で自動シャットダウンします。
入手方法と、ポータブル化モッディングを志す方へ
Kawaiiの全設計データ(MCAD、ECAD、BOM)はGitHubの「mackieks/Kawaii」リポジトリで公開されており、F3D/STEP形式の組立アセンブリも含まれます。アルミシェル単体の少数バッチ(約30台規模)が過去にEOI(Expression of Interest)フォーム経由で提示されたものの、Time Extensionの報道によれば応募が殺到してフォームは早期にクローズされました。今後同様のシェル頒布が再開されるかは未定です。
組立にはWii基板のOmega trim加工、Thundervolt基板の自作、Kawaii内部基板およびドック基板の発注・実装、配線の取り回しまで、相当に高度なPCBリワーク技術が要求されます。製作者YveltalGriffin氏は「Kawaiiの組み立ては難易度が高く、市販のフルキットも組立マニュアルも提供されない」と公式に断っています。実用機として小型のGameCube/Wii互換ハードウェアを求める方には、Short Stackのように映像出力までセルフコンプリートしたプロジェクトの方が現実的な選択肢となります。
それでも、純正Nintendoシリコンを使ってWii基板をここまで小型化し、なおかつ工業デザインとして成立させた事例は前例がなく、ポータブル化モッディングをひとつの工芸として極めた到達点であることは間違いありません。BitBuiltコミュニティで長年議論されてきたWiiのトリミング技術、磁気ポゴピンによる省スペース実装、CNC削り出し筐体の精度、これらを高い完成度で統合した本機は、レトロハード自作に取り組む方にとって設計思想を学ぶ教材として参照すべき一台です。腕に覚えのあるモッダーであれば、GitHubの公開データを起点に挑戦してみる価値が十分にあります。
出典:Notebookcheck、Macho Nacho Productions (YouTube)
参考:GitHub (mackieks/Kawaii)、BitBuilt Forums、Tom’s Hardware、GamesRadar+、Time Extension、GitHub (loopj/short-stack)
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