史上最大の「宇宙の地図」が完成。ダークエネルギーの真相解明に大きく前進

宇宙に対する人類の理解は過去100年にわたり、幾度ものパラダイムシフトを経験した。1929年にエドウィン・ハッブルが、宇宙が膨張していることを発見した。1960年代には宇宙が超高温・超高密度の特異点から始まる「ビッグバン」で誕生したことが確認された。そして1990年代には、遠方の超新星爆発の観測結果によって、宇宙の膨張が加速していることが判明したのである。

これらに基づく標準宇宙モデルにおいては、わたしたちが観測できる物質は宇宙全体の約5%を占めるにすぎず、残りの25%は不可視の物質である「ダークマター(暗黒物質)」、70%は膨張のための未知の力「ダークエネルギー」であると推定されている。しかし、いずれもその正体は謎に包まれたままだった。

そんなダークエネルギーの正体に迫るべく2021年5月に始まったプロジェクトが、「ダークエネルギー分光装置(Dark Energy Spectroscopic Instrument=DESI)」による観測である。このプロジェクトに関して2026年4月、計画されていた領域全体の観測が予定より早く完了したことが発表された。これにより、史上最大規模の宇宙の三次元マップが完成したことになる。

DESIは、4,700万個以上の銀河とクエーサー(中心にブラックホールをもつ極めて遠方にある明るい天体)を観測した。その数は過去すべての測定を合わせた数の6倍に相当し、現在そのデータ処理が進行中である。この分析結果は2027年に発表される予定だ。

「DESIの5年間にわたる調査は、目覚ましい成功を収めました」と、ローレンス・バークレー国立研究所の科学者でDESIディレクターのマイケル・レヴィは語る。「観測機器は予想以上の性能を発揮し、得られた結果は信じられないほど刺激的なものでした。これほど大規模なマップをこんなに迅速に作成できたことは目を見張るものがあります」

DESIによる5年間の観測で作成された地図の一部。天の川銀河の上下にある銀河やクエーサーが示されている。地球はくさび形の中心に位置しており、黒い隙間の部分は天の川銀河が遠方の天体を遮っている箇所を示している。なお、この写真で最も遠い銀河からの光は、地球に届くまでに110億年を経ている。

Photograph: Claire Lamman/DESI collaboration

予定を上回る効率

DESIのプロジェクトは、米エネルギー省(DOE)や米国立科学財団(NSF)の支援のもと、世界70以上の機関から900名を超える研究者が参加する世界的な取り組みだ。

DESIはアリゾナ州のキットピーク国立天文台にある口径4mのニコラス・U・メイヨール望遠鏡に取り付けられている。その心臓部は5,000本の光ファイバーだ。

それらの光ファイバーは、人間の毛髪より細い誤差10マイクロメートル以内の精度で配置されている。それぞれが独立して動き、5,000個の銀河に照準を合わせて各天体の位置や速度、化学組成を分光器で決定していく。観測対象を切り替えながら、4,700万個以上の銀河やクエーサーのデータを収集し続けてきたのだ。これは当初の予定だった3,400万個を上回るものである。

プロジェクトの成功に至る道程には困難もあった。2020年には新型コロナウイルスのパンデミックにより装置の最終テストが中断。22年にはコントレラス火災と呼ばれる大規模な山火事がキットピークを襲ったが、消防士と職員の尽力により望遠鏡への被害は免れている。そこからの復旧作業も、モンスーンと土砂崩れの影響により遅れていた。

「DESIは複雑ながらも非常に堅牢なシステムであり、それがこれほど長い間うまく機能し続ける様子を見守ることができて、本当に楽しい経験でした」と、DESIの共同機器科学者でカリフォルニア大学サンタクルーズ校とカリフォルニア大学天文台の教授でもあるコニー・ロコシは語る。「わたしたちは5年間かけてこの機器に精通し、システムの特性や挙動を熟知することができました。そのことが機器を効率よく運用するうえでも役立ち、DESIの観測結果としてこれほど素晴らしいデータと多くの科学的成果を得ることにつながりました」

関連記事: