[社説]民主主義の衰退止める希望の灯を

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ことしこそ、民主主義の衰退を食い止める転機にしなければならない。それは内からむしばむポピュリズムと、外から押し寄せる権威主義の荒波を乗り越えられるかどうかにかかっている。

2つの脅威はSNSと親和性があり、連動して民主主義を侵食する。反民主化の枢軸ともいえる構図を解き崩し、民主主義が復調に向かう希望の灯をともしたい。

新年早々、米国のベネズエラ攻撃は世界に衝撃を与えた。トランプ米大統領のような権威主義的な指導者には、その一存で軍事力の行使に踏み切る危うさがあることを如実に示したといえよう。

強権的な指導者が増えれば力と力の衝突が頻発し、やがてはかつてのような大戦への道をたどりかねない。そんな懸念が膨らむ。

ポピュリズムは庶民の不満に財政拡張と敵をつくることで留飲を下げさせる。そこで社会は分断され、政治は多党が乱立し、決められない政党政治から強権的な権威主義に傾く国が相次ぐ。第2次大戦前夜に世界が見た光景だ。

歴史は韻を踏むというが、デジタル社会の現代はより深刻である。SNSは不満を可視化しやすく、それをすくい上げるポピュリストが力を握る。庶民と指導者はSNSで直接つながり、政党やメディア、アカデミズムといった中間組織がないがしろにされる。

特に権威主義的な指導者ほどSNS利用が巧みで、人工知能(AI)も統制に使う。ポピュリズムとデジタル技術を連動させるデジタル権威主義は大きな脅威だ。

その象徴といえるトランプ氏が初めて大統領に当選して10年。米連邦議会は与野党が歩み寄ることを忘れ、成立する法律は減少傾向にある。議会制民主主義の弱体化は否めない。

トランプ氏は取引しやすい強い指導者を好み、欧州にも民主主義国の権威主義化に懸念が広がる。ことしは世界的に大きな選挙はあまりないが、忍び寄る侵食に気づいたときは手遅れになりがちだ。草の根でのポピュリズムや権威主義の浸透に目を凝らしたい。

今秋の米中間選挙で気になる動きがある。下院選挙区で区割りを恣意的に決めるゲリマンダーの横行だ。選挙区の党派性が色濃くなり、分断を固定化しかねない。

ドイツでは極右政党、ドイツのための選択肢(AfD)として初の州首相誕生が現実味を帯びる。日本では12府県で知事選を予定し、昨年の宮城県知事選では参政党が現職に肉薄した。ポピュリズム政党が国際的なつながりを持ち始めたことにも目を光らせたい。

中国やロシアなど権威主義国との体制間競争でも民主主義国は劣勢だ。国連機関の選挙は新興国を取り込む中国が優位に立つ。経済成長で中間層が育ち、本来なら民主化に向かってよいはずのグローバルサウス(新興・途上国)にも民主主義への幻滅が広がる。

共和制に移行したネパールでは王政復活を求めるデモが起きた。中東の民主化運動「アラブの春」もエジプトが軍主導の強権統治に回帰するなど失敗が鮮明だ。成長期待の高いサハラ砂漠以南の国々もロシアが影響力を強めた地域で軍事クーデターが相次ぐ。

スウェーデンのV-Dem研究所によると権威主義の国・地域は91となり、民主主義の88を上回った。ここは政党政治の踏ん張りどころだ。経済格差を縮め、適切な外国人政策で不満を吸収してポピュリズムを落ち着かせ、強権政治への誘惑を断たねばならない。

SNSは政治参加を促す面もあり、暴走を防いで質を高める対策が急務だ。運営事業者の規制や有権者のリテラシー向上、外国による情報工作対策が柱だが、我が国はいずれも後手に回っている。

与野党は表現の自由に配慮しつつ政治関連の投稿が収益にならないよう規制を具体化すべきだ。フランスは政府のサイバー部隊が外国による世論の分断を監視する。日本も体制整備を急ぎたい。

歴史的に民主化は好転も悪化も雪崩のように起こる。よい流れをつくるカギはやはりグローバルサウスだろう。スリランカに続き、若者が独裁的な政権を倒したバングラデシュは好例だ。

民主主義は幾多の試練を生き延びてきた。あらゆる手を尽くし、海図なき時代が大戦へと向かうのを阻止しなければならない。

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