新型iPhoneに搭載されると噂の「可変絞り」、その効果とは?(ITmedia NEWS)
そもそも絞り機構はどんな仕事をしてて、なぜスマホに搭載する必要があるのかって話である。絞りの仕事はおおまかにいって2つ。 1)撮像素子(イメージセンサーですな)に当たる光量を調節すること。光の量を調節する“穴”と思えばいい。穴が大きければ光がいっぱい通るし、小さければ少ししか通らない 2)ピントが合ってる範囲(被写界深度という)をコントロールすること。分かりやすくいえば、前後のボケを大きくしたり小さくしたり 1)の話からいこう。 カメラの場合、レンズ側に「絞り機構」が入ってる。普通は電子制御でコントロールするけど、原始的な完全マニュアルのレンズだと手動で変えられるので分かりやすい。 レンズの真ん中に複数枚の羽があり、それが動くことで中央の穴のサイズを変えて光量を調節しているのが分かる。これが一般的な羽根絞りという絞り機構。 この中央の穴がめいっぱい大きい時、「絞り開放」といってレンズを通った光がそのままイメージセンサーに届く。レンズにはF1.4とかF2.8とか書いてあるけれども、この数値(F値)がそのレンズは絞りの開き具合を示す値だ。数字が小さい方が大きい。このレンズは「35/1.4」と書いてある。レンズの焦点距離が35mmで、絞り開放時のF値がF1.4ということだ。 今のスマホカメラやアウトドア/ウェアラブルカメラのほとんどは絞り機構を持ってないので、常に「絞り開放」状態になる。 普通のカメラはイメージセンサーに当たる光を調整するのに、一度に通る光の量を決める絞りと、イメージセンサーに光が当たる時間を調節するシャッタースピードの2種類を組み合わせるのだが、絞り機構がないと、シャッタースピードだけでコントロールしなきゃいけない。 例えばこのひまわりの写真、iPhoneで撮ったものだけど、レンズのF値はF1.8固定、シャッタースピードは1/7000秒だ。快晴の屋外ではシャッタースピードを速くしなきゃいけない。 これ、一見、問題ないけれども、実はあえてシャッタースピードを抑えて撮りたいときに困る。 例えば、何気なくiPhoneで撮った東急世田谷線の招き猫車両。いい感じに撮れているように見えて、行先表示パネルが乱れてて読めない。 LEDを使ったパネルって常時点灯しているように見えて、実は細かく書き換えられているので、シャッタースピードが速すぎると点いてるとこと消えてるとこが混在してこうなる。 それを防ぐにはLEDパネルの書き換えサイクルより遅いシャッタースピードが必要になるわけで、ちょっと絞ってやるとシャッタースピードを遅くできる。実際にはISO感度も絡んでくるのだけど、ISO感度には下限ってものがあるのでまあここでは気にしない。 もう1つ分かりやすい例として、屋外のデジタルサイネージがある。 新宿に有名な3Dサイネージの猫がいる。新宿駅東口を出ると、観光客がスマホカメラを向けてるのだが、これもまた同様にシャッタースピードを落とさないとこんなわやくちゃなことになる。このときのシャッタースピードは1/895秒。 シャッタースピードを落とせるとこのようにきれいに撮れる。 このようにシャッタースピードをちょっと落としたいときがiPhoneに「絞り機構」が欲しくなる瞬間だ。 続いて2)。 分かりやすく言えば、絞りは背景のボケ具合(ピントの合う範囲)に関係している。 ざっくりいうと、主な要素は3つ。 1つは被写体が近くて背景が遠い方が背景がよくボケるし、ボケ具合も大きいということ。 2つめはレンズのF値。F値の数字が小さい方がピントの合う範囲が狭く(被写界深度が浅く)、前後がボケやすくなる。 3つめはレンズの焦点距離(あるいは画角とセンサーサイズ)。正確に書くとめんどくさいけど、要するに望遠になるほどボケやすくなるし、同じ画角ならセンサーサイズが大きい方がボケは大きい。逆に焦点距離が短ければ短いほどピントの合う範囲が広くなりボケは小さくなる。 スマホのカメラは「広角」で、なおかつ「センサーサイズが小さい」のでほっといても広い範囲にピントが合う。だから今までは問題にならなかったのだが、性能が上がり、センサーサイズが大きくなり、レンズのF値も小さくなり、近距離(数10cmとか)撮影時に、背景はそれなりにボケるようになったのである。 すると、「ここからここまでピントを合わせたいのだけど、どうしてもどちらかがボケちゃう」シーンがたまに出てくる。 例えばテーブルの料理全体にピントを合わせたいのに、メインディッシにしか合ってなくて後ろの小鉢はボケちゃうとか。 ジオラマを撮ったとき、記録として全体にピントが来てほしいのだけど、遠くの櫓がボケちゃったりとか。 それは「絞り機構」を入れることで解決できる。絞ってやればピントの合う範囲が広く(被写界深度が深く)なるから。 分かりやすいところで、35mmフルサイズセンサーのカメラに24mmのレンズを付けてF4.0、F8.0、F16の3つで撮り比べてみた。ボケが出やすいよう、近距離にある花にピントを合わせてある。絞り値によってピントの合う範囲が広くなり(深くなり)、背景のボケ具合も弱くなっていくのがよく分かる。 なぜ24mmにしたのかというと、スマホの広角カメラの画角がちょうどそのくらいだから。 同じ位置でiPhone 17 Proの広角カメラで撮ったのがこちらだ。 24mm相当でレンズはF1.8なのだけど、背景のボケ具合としては、F8.0のときと同じくらいか。 その秘密はセンサーサイズにある。35mmフルサイズに比べてすごく小さなセンサーで、35mmフルサイズの24mmと同等の画角なので「(35mm判換算で)24mm相当」といっているけれども、実際のレンズの焦点距離は6.8mmなのだ。 もし、スマホカメラが「絞り機構」(可変絞り)を搭載するとしたら、1)と2)の2つが理由となるわけだが、日常的にスマホカメラを使ってる経験からすると、ボケを抑える(2)よりは、シャッタースピードを抑える(1)時の方が有効かなと思う。 特に本格的に動画を撮る時は、屋外でのシャッタースピードを抑えて動きを滑らかに表現できる絞り機構搭載はうれしいはず。搭載されるならそっちが重視されてるのかも。
実は絞り機構を搭載するスマホカメラは初めてじゃない。 かつて韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が「Galaxy S9」(18年発売)と「S10」(19年発売)で、中国のXiaomiが「Xiaomi 13 Ultra」(23年発売)で2段階切替の絞りを、「Xiaomi 14 Ultra」(24年発売)で本格的な可変絞りを搭載してるけど、現行機種には受け継がれなかった。 今回、噂通りに絞り機構が搭載されるとしたら2段階切替(これだと単純な機構で済む)か、本格的な羽根絞りになるか分からないけれども、9月10日午前2時に答えは出る。さてどうなるか。
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