忘れられない110番 「おまわりさんですか」 幼い声が訴えた危機
北海道警察本部の通信指令室は静まりかえっていた。耳を澄ますと小刻みに、着信の電子音が聞こえる。近隣各地からの通報が、ここに集まる。
「静かでなくてはいけないんです」と大石正喜警部(55)は言う。
呼び鈴が鳴り響いていれば、それは通報者を待たせている証しなのだと。
もともとは、刑事志望だった。
機動隊員として全日空857便のハイジャック事件や豊浜トンネル崩落事故を経験。機動捜査隊にも所属した。
転機は2008年、奥尻島にある駐在所に転勤した時のこと。豪雨による土砂崩れの現場に急行し、報告する。さらに、近くで確認しようとすると、無線が飛んだ。
「行くな。見えるところでいい」
ゆっくりと、落ち着いた声だった。
「言葉だけの報告で、危険を察知して止めてくれたんだ」。40歳を目前にして、通信指令課に希望を出した。
配属されたのは千葉県警。通信指令の神様と言われるベテランの元で学ぶため、北海道警から出向することになった。
震えた声で「変なひとに追いかけられてる」
忘れられない110番がある。
13年春、通信指令室。机にある親指大の白いボタンを押した。回線が、通報者とつながる。
「おまわりさんですか」
幼い声がした。
「はい、おまわりさんです」…