米・ＥＵが貿易協定で合意、トランプ氏とフォンデアライエン氏が発表

米国と欧州連合（ＥＵ）は27日、自動車を含む大半のＥＵ輸出品に15％の関税を賦課する貿易協定で合意した。世界経済に打撃を与えかねない貿易戦争を回避した。

　　８月１日には高率の関税が発動する予定だった。トランプ米大統領は５月の時点で、ほとんど全てのＥＵ輸出品目に50％の関税を課すと示唆し、交渉への圧力を強めたが、その後税率を30％に引き下げていた。この日の合意はトランプ米大統領と欧州委員会のフォンデアライエン委員長の会談後に発表された。

　　外国為替市場ではユーロが主要10通貨に対して上昇。対ドルでは一時、0.2％高い１ユーロ＝1.1767ドル。対円でも0.2％上昇し１ユーロ＝173円73銭。スイス・フランに対しては0.5％高い１ユーロ＝0.9383スイス・フランとなった。

　　ドイツのメルツ首相らＥＵ加盟国首脳からは早速、合意を称賛する声が上がり、イタリアのメローニ首相は「持続可能」なものだと呼んだ。

　　シテ・ジェシオンの投資戦略責任者、ジョン・プラサール氏は合意について「株式市場に最も求められているもの、つまり可視性を取り戻すのに十分良好だ」と述べた。

　　「関税がエスカレートするリスクはもうなくなった。マクロ経済に関する大きな不安材料が消えた。投資家にとっては安心できる兆候だけではない。青信号だ」とコメントした。

食い違い

　　「これでディールは基本的にまとまった」とトランプ氏はスコットランドのタンベリーに所有するゴルフリゾートで記者団に述べた。「これまでで最大のディールだ」と話した。

　　また、フォンデアライエン氏は合意によって「安定」と「予測可能性」がもたらされると評価した。

　　ただ、フォンデアライエン氏とトランプ氏がそれぞれ発表した内容は、主要な条件の幾つかに食い違いが見られた。合意を実行する上での困難を浮き彫りにするものだ。トランプ氏は「自動車とその他全て」に15％の関税率が適用されると述べたが、医薬品や金属は対象外とした。鉄鋼とアルミニウムに関しては「これまで通りだ」だとし、医薬品は「この合意とは無関係」と語った。

　　フォンデアライエン氏はその後の記者会見で、15％の関税率は全てを包括し、個別分野の関税に上乗せされることはなく、医薬品、半導体、自動車を含むと述べた。金属への関税率については「引き下げられ、割当制度が導入される」と語った。

　　フォンデアライエン氏は「医薬品には15％の関税が適用される。米大統領が将来的に医薬品全般を世界的にどう扱うかという判断は全く別の問題だ」とした上で、関税率15％は小さな数字ではないものの、「われわれが得られた最善の結果だった」と説明した。

　　米政権高官はその後、双方が医薬品への15％の関税率で合意したと記者団に話した。他方で、鉄鋼輸入に関してはＥＵとの合意には至っていないとし、関税率は引き続き50％だと説明した。

　　ＥＵと米国が今後対処すべき多くの争点を巡り、全ての相違を解消できるかどうかは引き続き不透明だ。

　　テネオの調査副ディレクター、カーステン・ニッケル氏はリポートで「今後の焦点は解釈と実施のリスクに移り、政治的・技術的な疑問が入り交じることになる」と指摘。「この合意の性質を踏まえると、大きな不確実性が今後も続く可能性が高い」との見方を示した。

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対米投資上乗せ

　　トランプ氏によると、ＥＵは7500億ドル（約110兆7700億円）相当のエネルギー製品を購入し、既存の対米投資に6000億ドルを上乗せするほか、米国との貿易において加盟国市場をゼロ関税で開放することに同意した。「大量の」軍事装備品も購入するという。

　　会談前の段階で、ＥＵは15％の輸入関税は大半の医薬品にも適用されると予想していた。医薬品は交渉における重要な争点となっていた。

　　トランプ氏は数カ月前から貿易相手国の大半に対し、関税引き上げを通告。目的は米国の貿易赤字を縮小させることだった。しかし関税の行方やトランプ氏の予測不能な言動で、資本市場は神経質になっていた。

　　米・ＥＵ合意で、１兆7000億ドル規模の通商が絡む貿易戦争という重大リスクが、市場と世界経済から取り除かれた。それでもＥＵからの対米輸出が、依然より高い関税を課されることに変わりはない。

　　フォンデアライエン氏は「発端は不均衡だった」と指摘。「貿易の不均衡を是正することが望ましかった。しかも米欧の貿易が継続されるやり方での是正が望まれた。２大経済圏間の通商が良好でなくてはならないからだ」と述べた。

　　ＥＵと米国は数カ月にわたる交渉とシャトル外交を続けていた。今月に入りトランプ氏が関税率を30％に引き下げ、双方の合意は近いとみられていた。

　　ＥＵは合意不成立の可能性に備えていた。８月１日からＥＵ製品に30％の関税を賦課するとの脅しをトランプ氏が実行に移す場合、ＥＵも速やかに同率の関税を約1000億ユーロ（約17兆3700億円）相当の米国製品に課す計画だった。

原題：EU Reaches Broad Tariff Deal With US to Avert Painful Trade Blow、Euro Quoted Higher vs. G-10 Peers After EU, US Reach Trade Deal、Stock Investors Expect Rally as Europe Clinches US Trade Deal、EU, US Differ on Pharma Tariffs, Complicating Trump’s Trade Deal、US Agreed to 15% Tariff on EU Pharmaceuticals, US Officials Say（抜粋）