思考が冴えてる人は「5分」動く。科学が解き明かした脳の『再起動スイッチ』
思考のコンディションを整えたいとき、あるいは大きなプロジェクトに挑む前に、あなたはどんな準備をしていますか?
もし、軽く汗を流すことをその選択肢に入れていないのなら、最大の知的資源を活かしきれていないかもしれません。
運動が単に身体の健康のためだけでなく、私たちの思考そのものを鋭くする強力な手段であることが、科学によって明らかになりつつあるんです。脳のパフォーマンスを一段引き上げてくれる確かなテクニックがあるとしたら、試さない手はないでしょう。
なぜ動くと、思考が冴えるのか?科学が解き明かす脳の変化
運動が認知機能に与える影響は、何十年にもわたり、信頼性の高い研究で繰り返し示されてきました。
その詳細なメカニズムは今も解明が進められていますが、核となる発見は非常に明快です。
2018年に学術誌『Frontiers in Psychology』に掲載されたレビュー論文は、その核心を突いています。
運動は脳への血流を増やし、思考に必要な酸素と栄養を送り届け、特定の神経伝達物質のレベルを高めて集中力や意欲を調整し、自己肯定感を向上させる可能性があることを示しているのです。
これは全くの私見ですが、私自身、この効果を強く実感しています。
朝にジムを出ると、小さな達成感と共に1日がはじまり、その後の仕事にもより積極的に取り組めるのです。まるでウォーミングアップを終えたエンジンが滑らかに回転しはじめるように、生産的な1日へと移行できるイメージです。
2013年の別のレビューでは「より活動的な」人ほど周囲の状況に注意を払い、情報をすばやく処理する能力が高いと指摘されています。
つまり、運動は短期的な効果だけでなく、私たちの脳そのものを長期的につくり変える可能性を秘めているのです。
先の2018年のレビューも「継続的な有酸素運動は、脳の構造と機能に力強い変化(神経可塑性)を促し、認知能力の向上をもたらす」と結論付けています。
脳の性能を引き出す「一点集中」アプローチ
研究ではあらゆる形態の運動が推奨されていますが、特に注目すべきは、心拍数を少し上げるような、息が弾む程度の有酸素運動です。
専門的には「急性の有酸素運動」と呼ばれますが、重要なのはその即効性です。「たった1回、短時間行うだけでも、認知機能の向上が見られる」と多くの研究が示しています。
そのため、勉強をはじめる前、週の計画を立てる前、あるいは上司と重要な話をする前に、次のような運動を検討してみてください。
- 水泳
 - サイクリング
 - ジョギングやランニング
 - ジムの利用
 - 近所の早歩き
 
たとえ通勤で自転車に乗ったり、昼休みをジムで過ごしたりするような簡単なことでも、しっかりと有酸素運動を取り入れることが重要です。
「時間がない」からこそ選びたい。運動を組み込む設計術
運動する時間を見つけるのが難しいことは重々承知しています。特にストレスの多い学生や多忙なビジネスパーソンならなおさらでしょう。
しかし、自分の体をケアする時間を確保することが何よりも重要になるのです。
運動が学業や仕事の成績を向上させる可能性を考えれば、もはや交渉の余地はないと言っても過言ではありません。
もしジムやサイクリングロード、地域のスポーツセンターに行くのがどうしても無理なら、自宅でできることはたくさんあります。ここで目指すのは心拍数を上げることなので、スペースの許す限り有酸素運動に集中しましょう。
私自身も、大学院で研究に追われていたころ、大学のジムでスピンクラス(室内サイクリングのグループエクササイズ)を教えていました。参加する学生はもちろん無料です。
そしてまさに、研究が示す通りでした。
授業の直前にクラスを終えると、頭がすっきりと冴えわたり、その後の講義や議論への集中力が明らかに高まるのを、いつも実感していたのです。
思考のための最高の準備は、机の上だけで完結するとは限りません。
まずは5分、近所を早歩きすることからはじめてみませんか?
その1歩が、あなたの脳を最高のコンディションに導き、まだ見ぬ知的な景色を見せてくれるはずです。
著者紹介:Lindsey Ellefson
Lifehackerの特集エディター。現在は、勉強法や生産性向上術、家事やデジタルの片付けなどを取材している。Lifehacker入社以前は、Us Weekly、CNN、The Daily Dot、Mashable、Glamour、InStyleといったメディアでメディア論や政治関連を取材。近年はフリーランスとして薬物使用とオーバードーズ危機に焦点を当て、Vanity Fair、WIRED、The New Republic、The Daily Beastなどにも記事を寄稿している。
Source: Research Gate, National Library of Medicine(1, 2)