眠気の原因は「ミトコンドリア」の過負荷にあるのかもしれないとの研究結果
授業中や仕事中にどうしてもあらがえない眠気が襲ってきて困った経験がある人は多いはず。オックスフォード大学の研究チームが行った実験により、眠気の原因がエネルギー産生に関わる細胞小器官であるミトコンドリアの過負荷にあるかもしれないことがわかりました。
Mitochondrial origins of the pressure to sleep | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-025-09261-yWhy do we need sleep? Oxford researchers find the answer may lie in mitochondria | University of Oxford https://www.ox.ac.uk/news/2025-07-18-why-do-we-need-sleep-oxford-researchers-find-answer-may-lie-mitochondria
Sleepiness Could Be Triggered by a Power Overload in Our Brain : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/sleepiness-could-be-triggered-by-a-power-overload-in-our-brain研究チームは人との十分な生物学的類似性があるショウジョウバエを用いて、睡眠を調節する神経細胞(ニューロン)の分析を行いました。研究では「十分な睡眠をとったショウジョウバエ」と「睡眠不足のショウジョウバエ」が比較され、遺伝子活動や電気的シグナル伝達の違いを調べたとのこと。
論文の共著者でオックスフォード大学の生理学教授であるゲロ・ ミーゼンベック氏は、「私たちは睡眠の目的と、そもそもなぜ睡眠の必要性を感じるのかを理解しようと試みました。数十年にわたる研究にもかかわらず、明確な身体的トリガーを特定した人はいなかったのです」と述べています。
研究の結果、酸素や栄養素から体のエネルギーとなるアデノシン三リン酸を産生する好気呼吸を担うミトコンドリアが、眠気の発生プロセスに関与していることがわかりました。
睡眠不足のショウジョウバエの脳では、睡眠を調節するニューロン内のミトコンドリアが過負荷状態となり、電子が放出されて活性酸素という有害な化合物が産生されていました。睡眠を調節するニューロンはこの活性酸素に反応し、睡眠を生物学的な最優先事項にしていたと報告されています。 研究チームがハエの遺伝子を組み換え、睡眠を調節するニューロンにおける電子生成を増加させたところ、睡眠時間も増加することが確認されました。これとは反対に、電子生成量が低下するように遺伝子組み換えしたハエは睡眠時間が短くなったとのことです。
つまり、睡眠を調節するニューロンはミトコンドリアから漏れ出る電子量を検出し、特定のレベルを超えるとブレーカーが落ちるように眠気を誘発していたというわけです。論文の筆頭著者であり神経科学者のラファエレ・サルナタロ氏は、「なぜ私たちには睡眠が必要なのでしょうか?その答えは、細胞が酸素をエネルギーに変換する仕組みそのものに隠されているようです」と述べました。
なお、睡眠に関連する要因はミトコンドリア以外にも存在し、「1日に何杯コーヒーを飲むのか」「概日リズムがどのように調節されているのか」といったことも関わっています。それでも、睡眠に関する新たな知見が明らかとなったことで、睡眠障害やアルツハイマー病などの神経変性疾患の治療に役立つ可能性があるとのことです。
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