35B調達は2032年に終了、生産継続は英国とイタリアの発注次第
米国防総省は26日に一般公開したF-35調達報告書の中で「海兵隊が予定している280機のF-35B調達が2032年までに終了する」と言及し、航空自衛隊のF-35B調達も2032年までに終了する可能性が高いため、2033年以降の生産継続は英国とイタリアの発注次第になるだろう。
参考:Modernized Selected Acquisition Report (MSAR) F-35 Lightning II Joint Strike Fighter (JSF) Program (F-35) 参考:F-35Bの垂直着陸訓練に係る負担軽減策等について
英国はF-35プログラムのTier1パートナーとして「F-35Bを138機調達する」と約束してるものの、これは「138機の調達契約を正式に締結した」という意味ではなく「政治的なコミットメント」に過ぎず、F-35Bの調達契約は第一段階=Tranche1の48機のみで、2026年3月に48機目を受領したことを受けて「Tranche1での48機(TR2構成機34機+TR3構成機13機+1機損失)調達が完了した」と公式に発表した。
出典:Royal Air Force
2025年6月に発表した国防戦略の見直し結果の中で「政府はF-35調達を継続すべき」「より多くのF-35を購入すべき」「F-35BとF-35A(NATO核任務ミッションへの参加用として12機調達)の組み合わせでも良い」と一定の方向性を示し、2026年6月30日に発表した国防投資計画の中で「英国のF-35次期調達分27機には追加のF-35BとともにNATO核任務向けのF-35Aが12機含まれる」「F-35関連費用の4年分として22億ポンドを拠出する」と明記したが、約束されたF-35Bの138機調達に向けた「残り90機」については詳細を有耶無耶にしている。
英国のルーク・ポラード国防即応・産業担当相は7月9日「6月30日に発表された国防投資計画第28項を参照し、F-35Aを何機購入する予定なのか、その決定はいつまでに行われるのか」という質問に「F-35Aは12機発注する予定で、具体的な納入スケジュールはF-35プログラムオフィス(Joint Program Office)との協議によって決定される。英国は2030年代初頭から次期F-35の納入開始を目指している」と回答し、英国のNavy Lookoutは「これまでの公式見解とは裏腹にF-35の発注が停滞していることは明白だ」と指摘。
The MOD is also concerned about the F-35B production line closing in the mid-2030s. I would be very surprised if we ever achieve the 138 currently in the programme of record.
— Ben Obese-Jecty MP (@BenObeseJecty) July 11, 2026
“英国は現在保有する47機に加え、今後数年間は追加の機体を受領する予定はない。国防省は新たな機体の納入について「2030年代初頭になることを望んでいる」と述べている。この追加分にはF-35A×12機、F-35B×15機が含まれる見込みだが、これもJPOとの交渉次第である”
Navy Lookoutの指摘についてポラード国防即応・産業担当相に質問したベン・オビース=ジェクティ下院議員が「国防省は2030年代半ばにF-35Bの生産ラインが閉鎖されることに懸念を抱いている」「現在の公式調達計画に定められた138機を最終的に確保できたら非常に驚く」と述べていたが、国防総省は26日に一般公開したF-35調達報告書の中で「海兵隊が予定している280機のF-35B調達が2032年までに終了する」と言及し、2033年以降の生産継続は英国とイタリアの発注次第になるようだ。
出典:防衛省
日本は2026年までに33機目までの調達契約を締結済みで、このまま年3機の契約ペースで推移すれば2029年までに42機分の全契約を締結し終えることになり、防衛省の九州防衛局は訓練計画の変更に関する説明資料の中で「新田原基地で編成されるF-35B飛行隊は2025年に8機で運用が開始され、2029年には第2飛行隊が加わって運用機は30機に増え、2031年には約40機になる」と言及しているため、航空自衛隊のF-35B調達は2032年までに終了する可能性が高い。
英国は政治的に約束した138機調達のうち48機目以降、イタリアも政治的に約束した40機(A型を含めた場合は115機)調達のうち13機目以降の調達契約を締結しておらず、早く予算を確保して契約を締結しないと2032年以降の生産が途絶えることになり、特にF-35は正式契約の前にリードタイムの長い構成部品を先に発注しておく主要部品の事前購入(Advanced Procurement)が必要なので、日米の調達終了以降もF-35Bの生産を途切れさせないためには2029年末までに新たな発注が必要になってくるだろう。
出典:Modernized Selected Acquisition Report (MSAR) F-35 Lightning II Joint Strike Fighter (JSF) Program (F-35)
もう英国はF-35Bを138機調達するという約束を守れそうにないが、奇跡が起きても英国とイタリアが予定している数量を発注しても需要が117機しかなく、F-35Bの生産ライン(特にF-35B専用の機体やリフトファン付きのF135-PW-600の生産)を長く維持していくのは非常に難しいものがあり、2030年代に閉鎖される可能性は低くない。
関連記事:英国が約束したF-35B調達、生産ライン閉鎖までに138機全てを調達できたら驚き 関連記事:英国はF-35Bの完全運用能力をまもなく宣言、会計検査院や議員は懐疑的 関連記事:英会計検査院、F-35Bの稼働率は目標の約半分しかなく期待外れ 関連記事:米海兵隊がF-35Bの調達数を73機削減、代わりにF-35Cの調達数を増やす
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by 1st Lt. Christopher Guerra