辺野古転覆「取材を通じ人災と確信」/所信表明、やじ少なく 産経ニュースLive詳報
政治や経済などの最新動向について、経験豊富な記者が語り合う産経新聞の動画番組「産経ニュースLive」。10月6日の配信では、「偽りの平和学習・臨時国会召集」をテーマに、編集局の矢野将史編集委員、大竹直樹調査報道部次長、千田恒弥政治部官邸キャップが議論を交わしました。YouTubeで無料公開された番組前半の主なやり取りは以下の通り。番組後半はこちらの記事からご視聴いただけます。
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米海兵隊員の強盗殺人事件と日米地位協定
矢野将史編集委員:こんばんは。産経ニュースLive、矢野将史です。今日は前那覇支局長で現在、調査報道部次長の大竹直樹さんに来てもらいました。大竹さんは9月末に発売された『偽りの「平和学習」』(産経新聞出版)の産経新聞取材班キャップとして執筆に当たりました。先月末に出たばかりなのにもう重版が決まっているという、異例のヒットを続けている話題の本です。沖縄の辺野古沖転覆事件の真相に迫ったこの本について、大竹さんにいろいろとお話を聞いていこうと思っています。
その前に、国会が現在大変な状況になっていますので、最新事情について政治部官邸キャップの千田恒弥さんにも来てもらいました。昨日の5日に高市首相の所信表明演説が行われ、明日から衆院と参院で各党の代表質問が行われます。この所信表明のポイントなどを聞く前に、高市首相が演説に入る直前、沖縄で起きた米海兵隊員による強盗殺人事件、まだ容疑者段階ですけども、これについて「極めて遺憾であり、米側に強く抗議する」と演説の前に壇上で怒りをあらわにしました。この背景について、まず千田さん、どうして急遽言及したのでしょうか?
千田恒弥政治部官邸キャップ:当初、我々に配られた所信表明演説の原案の中には一切触れられていませんでした。午前中の段階でこのニュースが入り、急遽文言を入れることを決めたようです。今年9月の沖縄県知事選で12年ぶりに革新から保守系が県政を奪還したという背景もあり、迅速に対応しなければならないという政権側の危機感があったのだと思います。
矢野将史編集委員:大竹さんは長く那覇支局長を務められていましたが、米軍の犯罪に対する県民の怒りや不満はやはり強いものがありますよね。
大竹直樹調査報道部次長:そうですね。まず31年前の1995年に少女暴行事件があり、この時は県民の反発が大きなうねりとなって、その後のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意へとつながっていきました。普天間飛行場の辺野古移設にもつながる話ですが、今年はちょうどSACO合意から30年の節目の年にあたります。千田さんが話したように、就任早々の古謝新知事も週末の記者会見で日米地位協定の見直しに言及しているほどです。今回は容疑者が基地の外で身柄拘束されたため日米地位協定の適用はありませんでしたが、もし基地内に逃げ込んだ場合は司法権が及びません。こうした事件が起きるたびに県民は怒り心頭に発し、日米地位協定の議論へと発展することが多かったですね。
矢野将史編集委員:沖縄のメディアも連日トップで扱っているようですね。
大竹直樹調査報道部次長:はい。例えば琉球新報の一面トップでも「在沖米軍トップ謝罪せず」と大きく報じられていました。容疑者が否認していることもあり謝罪しづらい面もあるかもしれませんが、米側は捜査協力の意向を示している一方、昨日県庁で知事と面談した在沖米軍トップのベンジャミン・ワトソン中将は謝罪の言葉を口にしなかったため、地元紙は非常に大きく問題視しています。
矢野将史編集委員:きちんと捜査が進んで、沖縄県警も確証を得て逮捕に踏み切ったはずですからね。
大竹直樹調査報道部次長:タトゥーなどの身体的特徴が報道されている通り、足取りも含めて裏付けをとっているものと思います。
矢野将史編集委員:今後の捜査と同時に、高市政権と古謝県政がいち早く動いたと見ていいですね。明日、古謝知事は上京される予定ですか?
千田恒弥政治部官邸キャップ:はい。明日上京し、小泉進次郎防衛大臣、高市首相、木原官房長官と面会する予定です。沖縄県側の怒りや思いを政府側に伝え、政府側も何らかの対応策を出してくるのではないかと見ています。
令和8年度予算は石破政権下で編成されたもの
矢野将史編集委員:分かりました。見守っていきたいですね。所信表明演説に話を戻しますと、1年前の前回と比べて野党のやじがあまり聞こえず、意外と静かだった印象ですがいかがでしたか?
千田恒弥政治部官邸キャップ:現在、衆院で与党が3分の2超を占めているため、やじを飛ばしても聞こえにくい状況です。前回は少数与党で野党の方が多かったため、議場内は相当なやじが飛んでいましたが、選挙を経て野党が小さくなったことで様相が一変しました。
矢野将史編集委員:やじの声もほとんど聞こえなかったわけですね。演説では「私が貫く志は経世済民だ」「最優先課題は経済の力で国民の暮らしを守り、希望のある未来を切り開くことだ」と話しており、アベノミクスを彷彿とさせる経済最優先の姿勢が打ち出されていました。
千田恒弥政治部官邸キャップ:高市さんは3回目の挑戦で(総理)総裁になりましたが、保守・タカ派のイメージが先行しがちな一方、演説では「日本の持つ技術を活かして経済を元気にしなければ安全保障も成り立たない」というメッセージを一貫して伝えています。宇宙分野などの具体的な技術に言及し、「危機管理投資」や「成長投資」といった長年温めてきた政策を強く打ち出した演説でした。
矢野将史編集委員:「技術で勝ってビジネスでも勝つ」とも言っていましたね。
千田恒弥政治部官邸キャップ:令和8年度予算は石破政権下で編成されたもので根幹は変えられませんでしたが、令和9年度予算こそが高市首相が財政的裏付けを持って一番やりたかったことを実行できる初めての年になります。そのため、「強い経済」を前面に打ち出しています。
矢野将史編集委員:市場への目配りもかなり意識している印象でした。
千田恒弥政治部官邸キャップ:マーケットを強く意識しています。単に歳出を増やすのではなく、強い経済と財政の持続性を両立させるのが目指す新しい経済政策であるという点を丁寧に説明しており、本日の株価も好意的に反応して上がっています。
矢野将史編集委員:数えてみると演説内で「市場」が5回、「挑戦」が7回使われていました。挑戦して強い経済を目指しつつ、市場にも目配せするという両睨みの姿勢ですね。
千田恒弥政治部官邸キャップ:マーケットを意識しながら成長投資や危機管理投資を行い、未来へ種をまくというメッセージです。
矢野将史編集委員:大竹さん、演説では「強い沖縄経済の構築」にも触れられていましたが、地元での期待はいかがでしょうか?
大竹直樹調査報道部次長:古謝知事が選挙戦で最も強調したのが経済でした。普天間飛行場返還予定地周辺を開発する「ゲートウェイ2050プロジェクツ」は玉城デニー前県政では県が関与していませんでしたが、古謝知事のもとで県と経済界が連携して動くことになり、経済発展への期待が高まっています。
簗農水相の道路予算カット発言
矢野将史編集委員:臨時国会は12月12日までの69日間で、消費税減税や衆院定数削減が焦点ですが、これに影を落としそうなのが簗和生農林水産相の問題です。私の地元・栃木選出で恥ずかしい限りですが、就任前の5月の懇親会で「支援しなかった地元自治体の道路予算を大幅にカットした」と発言した音声データが公開されています。選挙結果で予算を減らしたなど聞いたことがなく、行政の公平性を損なう問題です。文春や新潮の報道後に辞任するかと思いましたが、官邸はどう見ていますか?
千田恒弥政治部官邸キャップ:先週問題が発覚し、会見の印象は芳しくありませんでしたが、JNN(TBS系)の世論調査で内閣支持率に大きな悪影響が出ておらず、官邸としては現時点でそこまで響いていないと判断しています。しかし、国交省による予算変動の調査や、3連休明けからの予算委員会で野党から追及されることは確実で、任命責任が問われることになります。
矢野将史編集委員:もし働きかけていれば行政の公平性や恫喝の問題ですし、働きかけていなければ嘘をついたことになり、どちらにしても信用に関わります。第2次安倍政権のように、失言した閣僚を即断で更迭するような判断が必要ではないでしょうか。
千田恒弥政治部官邸キャップ:官邸内でもどのタイミングで決断するかを見極めているところだと思います。
辺野古沖転覆事故の真相「取材通じ人災と確信」
矢野将史編集委員:さて、一般公開の最後に、書籍『偽りの「平和学習」』について伺います。本の中で、取材班が「取材を通じて人災だと確信した」と書かれていました。この点について語っていただけますか?
大竹直樹調査報道部次長:まず、3月16日に事故が発生しまして、その夜、抗議船を運航していた「ヘリ基地反対協議会」が名護市内で会見を開きました。私は4年前の知床観光船沈没事故の取材経験があり、法改正によって定員12人以下の非旅客船にも国への事業登録が義務付けられた経緯を知っていました。会見で「海上運送法に基づく事業登録はしているか」と質したところ、幹部は答えられず、海上行動チームの責任者が消え入るような声で「ボランティアだったので(していない)」と答えました。悲劇を繰り返さないための法改正だったにもかかわらず、最初の一歩である登録すらしていなかったことに強い憤りを覚えました。
もし登録していれば、波高や風速などの出航基準(安全管理規程)や乗船名簿の作成が義務付けられ、出航を見合わせていた可能性もあります。今回の事故では「不屈」が転覆し、救助に向かった「平和丸」も転覆しました。乗船名簿があれば、海に投げ出された生徒たちの中で誰がいないのかを迅速に把握でき、船の下に取り残されていた武石知華(ともか)さんの発見が早まっていたはずです。引率教員の不在も含め、防げたはずの事故という意味で「人災」と確信しました。
矢野将史編集委員:そうした怒りに近い問題意識から始まった徹底取材の成果がこの本に結実しているわけですね。それでは一般公開はここまでとし、後半の会員向けコーナーに移りたいと思います。千田さん、ありがとうございました。
大竹直樹調査報道部次長 / 千田恒弥政治部官邸キャップ:ありがとうございました。
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番組後半は、こちらの記事からご覧いただけます。