「ここで死ぬ」 入管施設に13年、イラン人男性の収容が続く事情

長期収容者が収容されている東日本入国管理センター=2019年12月28日、本社ヘリから

 いつまで収容されるのか、終わりが見えない。

 イラン人男性のアリさん(51)=仮名=は日本に不法入国後、罪を犯し、日本からの強制退去を命じられている。

 「(イランへの)送還可能なときまで」との決まりで入管の収容施設に入れられ、13年が過ぎた。

 収容期間は、現在いる収容者のなかで最長だ。

 「ここで死ぬことになるだろう」

 面会取材に対して絶望的な表情で語るアリさんは、なぜこれほどまで長く、収容され続けているのか。

 そこには日本とイランが抱える特有の事情が絡み合っていた。

不法入国、薬物事件の末に

 アリさんは、どんな経緯で入管施設に収容されることになったのか。

 本人が望んでいる難民認定の申請書類や訴訟記録によると、アリさんは1974年に8人きょうだいの末っ子として、イラン南西部の都市で生まれた。

 高校卒業後に運送会社などに勤務。結婚し、2人の子をもうけた。

 2005年ごろ、写真やビデオの撮影を行う事業を立ち上げたが軌道に乗らず、08年1月にイスラエル国籍の他人名義のパスポートを使い、出稼ぎ目的で日本に入国した。

 3カ月後、東京都内のアパートで乾燥大麻を所持したとして現行犯逮捕され、その他の薬物事件を含めて起訴された。東京地裁で08年7月、懲役4年・罰金50万円の有罪判決を言い渡され、収監された。

 服役中の12年9月、日本からの退去を命じる「退去強制令書」を受け、刑務所から出所後にそのまま入管施設に収容された。

難民認定申請は認められず

 アリさんは収容後、法務省に難民認定を申請した。父親は79年のイラン革命前、首相の秘書をしていたが、革命後に政治犯として逮捕されて拷問を受けた。

 兄や姉も逮捕されたとして、アリさんは「イランに戻れば迫害を受ける」と訴える。

 しかし、難民とは認められなかった。不認定処分の取り消しを求めて訴訟を起こしたものの、裁判所からも「(アリさんが)日本に入国するまでの間、イラン政府から逮捕されたことはなく、迫害を受ける恐れがあるとは認められない」と請求を退けられた。

 アリさんは収容先を転々とし、22年11月から東日本入国管理センター(茨城県牛久市)にいる。

 「イランに帰れば殺される。日本はなぜ難民と認めてくれないのか。子どもに会いたい。人間らしく生きたい」

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