〈目撃〉なぜ? くちばしが半分しかない鳥がライバルたちに36連勝 NZのオウムのケア
ニュージーランド南島の山岳地帯に生息しているオリーブ色をしたケア(Nestor notabilis、ミヤマオウム)は、好奇心がとても強く、複雑な問題を解決できることで知られている。なんと、仲間を「笑わせる」こともできるという。そして今回、「ブルース」と名付けられたケアが、上くちばしを失っても巧みな技術で戦えることを初めて実証した。 【関連動画】「ブルース」の新技、36連勝の圧勝 生存に不可欠だと考えられている顔のパーツを失ったにもかかわらず、ブルースはニュージーランドのウィローバンク野生動物保護区で、ケアの群れ(サーカスと呼ばれる)で順位が一番高いアルファオスにまで上りつめた。 体に障害を抱えているのに、どうやってこれほど高い社会的地位を獲得したのか。それを解明するため、ある研究チームが最近、ブルースが群れの他のオスとどのように関わっているかを分析した。 2026年4月20日付けで学術誌「Current Biology」に掲載された研究結果によると、ブルースは両足と下くちばしを使って、槍試合に似た斬新な攻撃でライバルを打ち負かしていることが判明したという。 「ブルースが半分しかないくちばしを最大限に生かしていることは間違いないでしょう」と、英スコットランド、セント・アンドリューズ大学の比較心理学者、アマリア・バストス氏は語る。「野生では生き残れなかったかもしれませんが、飼育下で新技を編み出し、他の鳥を蹴散らすことに成功したのです」。なお、氏は今回の研究には関与していない。
絶滅危惧種であるケアはカラスほどの大きさで、ニュージーランドにしか生息していない。同国カンタベリー大学の博士研究員であり、今回の論文の筆頭著者である生物学者アレックス・グラバム氏によると、ケアの賢さは、光る物を盗んだり、車のワイパーをかじったりといった「いたずら行動」として表れることもあるという。 鋭く曲がったケアのくちばしは、本来、生まれつき備わった「万能ナイフ」として重要な役割を果たすものだ。くちばしを使って物をこじ開けたり、羽繕いをしたり、寄生虫を取り除いたりする。 「くちばしを失えば、野生で生き残るのは極めて難しくなるでしょう」と、オウム類の知能を研究するウィーン獣医学大学の認知生物学者アリス・アウエルスペルク氏は話す。なお、氏は今回の研究には関与していない。 ブルースは幼鳥のとき、おそらくネズミ捕り器か何かに引っかかって、上くちばしを失った。その後ニュージーランド自然保護省によって保護され、ウィローバンクの鳥類飼育施設に運ばれた。 飼育されている10年以上の間に、ブルースは失ったくちばしを補うため、新しい行動を編み出すようになった。例えば、バストス氏らの観察によると、ブルースは舌と下くちばしの間に小石を挟み、それで羽繕いをするという。