いま「一番人気の犬種」は?ベスト3とワースト3発表 あのブヒ系からバズらない名犬まで 米国
アメリカン・ケネルクラブ(AKC)は、犬の血統品種の登録を管理している。このデータを利用して、毎年どの品種が一番人気で、どの品種が米国の犬社会から姿を消しつつあるのかを把握することができる。 【画像】いま米国で最も人気の犬種ベスト3とワースト3 犬種の人気は一時の流行にすぎないと思う人もいるかもしれないが、実際にはそれは、リアルタイムで行われる人為淘汰の実験だ。あなたがどの品種を選ぶかは、犬の行動と健康、そしてあなたと愛犬のあいだの絆に、現実的に影響を与える。 ここでは、2024年最新データの上位と下位を取り上げる。それぞれに個性的な顔ぶれの人気と不人気を左右してきた、生物学的・文化的・進化的要素を解説していこう。 ■米国で人気の犬種ベスト3 1. フレンチブルドッグ フレンチブルドッグは、米国で最も愛されている犬種であり、2022年にラブラドールレトリーバーからこの地位を奪って以来、堅持しつづけている。 「フレンチー(Frenchie)」の愛称で知られる彼らは、小さめの体、毛並みの手入れが最小限で済むこと、運動量の少ないライフスタイルから、都市住民や、初めて犬を飼う人にぴったりの伴侶といえる。 だが、生物学的観点からは、フレンチブルドッグはトレードオフの典型例だ。学術誌『Canine Genetics and Epidemiology』に掲載された論文で解説されている通り、フレンチブルドッグは選択交配により、極端な短頭、すなわちマズル(吻)が短い特徴的な外見を獲得した。 このためフレンチブルドッグは、人が生まれつき魅力を感じる、大きな眼や平坦な顔面といった、赤ちゃんに通じる特徴を持った顔をしている。しかし忘れてはいけないのは、まさにこうした特徴が、彼らが抱える慢性的な健康問題と一貫して結びついていることだ。フレンチブルドッグのかわいさは、深刻な呼吸障害、脊椎の形成異常、生殖異常と表裏一体なのだ。 フレンチーはおそらく美的基準による人為淘汰が、生物的な機能を崩すペースで進み得ることを示す、端的な例といえるだろう。この品種の絶大な人気は、品種の標準的外見と長期的福祉に関して、無視できない倫理的な問いを提起している。 2. ラブラドールレトリーバー ラブラドールレトリーバーは、30年以上にわたって人気ランキングの首位を守ってきたが、現在は2位に転落した。とはいえ当然ながら、この品種はいまも家庭犬として愛されている。ラブラドールはいわば「多機能型」の犬種だ。フレンドリーで訓練しやすく、高い順応性をもち、体つきもしっかりしている。 これらの特性は、彼らがもともとワーキングドッグ(使役犬)として作出されたことを考えれば意外ではない。学術誌『Applied Animal Behavior Science』に掲載された論文は、ラブラドールは、運動量の多さ、水を好む傾向、協力的な気質を維持していると指摘している(彼らは、原産地であるカナダのニューファンドランド島では漁で使役され、小船の牽引、水中の魚網回収などを担っていた)。 ラブラドールの進化的成功は、人との長年にわたる密接なパートナーシップを通じて形づくられた。こうした歴史のなかで、彼らは「御し易さ(biddability)」と呼ばれる形質を獲得した。これは従順で、指示によく従う特性のことだ。こうした特性はとりわけ、指示に従うことが非常に重要なサービスドッグ(盲導犬、介助犬など)としての成功に寄与した。 ラブラドールは、人のニーズと、犬の生物学的特徴が絶妙に合った実例の一つだ。しかし世界を見渡すと、一部の地域では、人気の過熱により過剰繁殖が行われ、そのために股関節形成不全や肥満の発症率が上昇している。責任あるブリーディングと飼い主への啓発は、ラブラドールの愛すべき特徴を維持するために欠かせない。