アメリカ陸軍のタイフォン中距離ミサイルシステムを沖縄県の嘉手納基地で恒久的に「保管」する計画を発表(JSF)
9月25日に沖縄防衛局は、鹿児島県の鹿屋航空基地(海上自衛隊)に一時展開中のアメリカ陸軍のタイフォン中距離ミサイルシステムは、9月24日に終了した「オリエント・シールド26」演習の撤収後に、10月中旬までを目処に沖縄県の嘉手納航空基地(アメリカ空軍)に保管されると正式発表しました。出典:沖縄防衛局
アメリカ側からはあくまで車両型の機材(射撃統制システム×1、発射機×2、支援機材)の保管であり、日本への恒久的な部隊の配備ではないと説明されています。ただしこれはミサイル発射システムの一式が日本国内の基地に置きっ放しで恒久的に保管されることを意味しており、ミサイル弾薬も含めて事前集積となります。部隊の操作人員のみが訓練や有事の際にアメリカ本土から航空機で日本に移動するという形態になります。
なおタイフォンだけでなく、アメリカ陸軍のHIMARS多連装ロケット発射システムも同様に嘉手納航空基地に保管されることが発表されています。HIMARSはアメリカ海兵隊の機材が既に沖縄に配備済みですが、それとは別にアメリカ陸軍が装備するHIMARSがやって来ます。
すると将来的にアメリカ陸軍のLRHWダークイーグル長距離極超音速兵器も同様に日本の基地に「保管」される可能性が高いでしょう。そして今回と同じようにアメリカ政府と日本政府は「あくまで機材の保管であり部隊の恒久的な配備ではない」と説明する筈です。ただし射程3500kmもあるLRHWダークイーグルは嘉手納基地よりももっと後方に射点を置けるので、機材を保管する場所は本州や北海道の自衛隊の基地になると思われます。
アメリカ陸軍のMDTF(マルチドメイン・タスクフォース:多領域任務部隊)の長距離火力(LRHW)、中距離火力(タイフォン)、短距離火力(HIMARS)の全ての機材が日本で「保管」する方向になりそうです。これら全て対中国戦を想定した機材です。
タイフォン:射程1600km以上(トマホーク巡航ミサイル)
アメリカ陸軍よりタイフォン。4連装のMk41VLS(垂直発射システム)※タイフォンは4連装のMk41VLS(垂直発射システム)であり、様々な種類のミサイルを発射することが可能。
※主兵装はトマホーク巡航ミサイル(射程1600km以上)で、基本的には対地攻撃用だが、最新仕様のトマホークBlockⅤaは対艦攻撃も可能な対地・対艦の両用仕様になる。
※SM-6対空ミサイルも発射可能だが、タイフォンには防空システムとしてのレーダーや火器管制装置は用意されていないので、SM-6は基本的に準弾道飛行モードで対地攻撃で使用される。なお対艦攻撃も可能とされる。SM-6の準弾道飛行モードでの射程は未発表だが、トマホークより射程は短い。
※タイフォンは基本的にトマホーク地上車両発射機だが、既に横須賀にはアメリカ海軍第7艦隊のイージス艦などの「トマホーク艦船発射機」が多数配備されているので、タイフォンの事実上の日本配備である「保管」のインパクトは薄い。
HIMARS:射程1000km(PrSM弾道ミサイル改良型の予定)
アメリカ陸軍よりHIMARS。発射しているPrSM短距離弾道ミサイルは初期生産型。- GMLRS誘導ロケット弾:射程90km(M30A2、M31A2)
- ER-GMLRS誘導ロケット弾:射程150km(M403、M404)
- ATACMS短距離弾道ミサイル:射程300km(M57)
- PrSM短距離弾道ミサイル:射程500km(初期型:インクリメント1)
- PrSM短距離弾道ミサイル:射程1000km(改良型:インクリメント4、開発中)
※HIMARSは発射ポッドを入れ替えることで様々な種類のロケット弾やミサイルを撃てる。ポッド1基あたりロケット弾は6連装、ATACMSは単装、PrSMは2連装になる。HIMARSは発射ポッド1基、MLRSは発射ポッド2基を搭載可能。
※PrSMはインクリメント(increment : 増分)という改良型の開発段階があり、インクリメント4の改良型で射程1000kmとなる予定。
LRHW:射程3500km(対中国想定で北海道ないし本州が射点)
アメリカ陸軍よりLRHWダークイーグル。中距離弾道ミサイル相当の極超音速兵器。※射程3500kmならば対中国想定で北海道ないし本州を射点とするのが最有力なので、「保管」する場所もその付近の自衛隊基地になる可能性がある。
※LRHWの正式名称は「Long Range Hypersonic Weapon」で「長距離極超音速兵器」になるが、これはアメリカ陸軍の保有するミサイルで最も長距離まで飛べるため。ただし弾道ミサイルの区分で見た場合は中距離弾道ミサイル級の射程に分類される。
※現時点でLRHWダークイーグルの日本での「保管」は未発表。正式に決まった場合、おそらく中国とロシアから激しい反発が予想される。中距離弾道ミサイル級の射程を持つ新型の極超音速滑空ミサイルであり、戦術的な価値は非常に高く、日本に置くインパクトは大きい。
LRHWダークイーグルの公称射程の変遷
- 3500キロメートル(2175マイル) ※2025年12月12日に判明
- 2775キロメートル(1725マイル) ※2021年5月12日に判明
- 2253キロメートル(1400マイル)
弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。