【MUSIC AWARDS JAPAN 2026】エントリー作品から見る、壁を超える日本音楽の今

62部門から77部門へ――MAJが目指す場所

 国内最大規模の国際音楽賞【MUSIC AWARDS JAPAN 2026】(以下、MAJ)が、6月13日に開催される。

 MAJは「世界とつながり、音楽の未来を灯す。」をコンセプトに、日本の音楽業界主要5団体が設立した賞だ。『NHK紅白歌合戦』がその年の音楽を“共感”で総括するイベントだとすれば、MAJは共感に加えて“発見”を促す場だろう。アーティストや音楽関係者自身が投票で大賞を決め、授賞式の模様はYouTubeで全世界に配信される。その設計には、音楽を国内外のリスナーと共有しようとする意志が込められている。

 第1回では、各賞で最優秀賞を受賞した楽曲の国内再生数が平均31%増加するなど、市場へのポジティブな波及効果も確認された(※)。第2回となる今年は対象を2025年リリース作品に絞り(一部部門を除く)、よりリアルタイムのトレンドを映し出す賞になった。表彰部門も77へと拡大し、MAJが捉えようとする「日本の音楽」の射程は、さらに広がった。

※【MUSIC AWARDS JAPAN】最優秀賞受賞曲の国内再生数が31%増加 パフォーマンス曲は49%増加|https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/149895

2,000作品のエントリーが示す、日本音楽の「今」

 日本の音楽の最大の特徴は、その多様性にある。ポップ、ロック、ヒップホップ、エレクトロ、演歌、ボーカロイド――それぞれに固有の文化があり、時に混ざり合いながら雑多なサウンドが受容されてきた。MAJが今年77部門を設けているのは、そうした多様性をできる限り拾い上げようとしているからだ。

 その多様性の断面として<最優秀楽曲賞>のエントリーを見てみよう。ジャンル別に見ると「J-POP」が58%と半分以上を占めるが、その内訳はさまざまだ。史上初の2年連続年間アーティストランキング首位を獲得するなど、前人未到のスケールで走り続けるMrs. GREEN APPLE、「IRIS OUT」が”JAPAN Hot 100”で14回、“Global Japan Songs Excl. Japan”で26回の首位を獲得し国内外でプレゼンスを高めている米津玄師、デビュー1年目にリリースした楽曲すべてが1億回を突破するなど数々のヒットソングを世に送り出したHANA。同じJ-POPでも、発信しているメッセージも、目指している場所も異なる。

※2025年のジャンル比率は、昨年掲載の特集記事とは集計基準が異なります(2026年の区分に統一して再集計)

 昨年と比べるとロックの存在感がやや後退し、アイドルが増加している。要因のひとつは今年からエントリー楽曲が100曲となり、対象期間が2025年リリース作品に限定されたことで、人気バンドのロングヒット曲が外れたこと。もうひとつは、M!LKや=LOVEなど着実にキャリアを積み重ねてきた中堅グループが、動画プラットフォームでのバズやメディア露出をきっかけに新たなリスナーに“見つかった”ことだ。

■<最優秀楽曲賞>プレイリストはこちら(SpotifyApple Music

 しかしこれだけでは、日本の音楽の全体像はつかめない。MAJが77部門を設けている意味は<最優秀楽曲賞>だけでは映りきらない音楽の厚みと広がりにある。では、その広がりはどこまで届いているのか。複数の部門のデータを見ると、その答えが見えてくる。

部門が映す、日本音楽の届き方

 ジャンル比率をさらに多くの部門に広げると、その光景は様変わりする。以下は主要6部門の<最優秀楽曲賞><Best Global Hit from Japan>と、国内ジャンルカテゴリー10部門、国内スペシャルカテゴリー5部門の計17部門にエントリーした国内楽曲777曲(重複なし)のジャンル比率だ。J-POPが最多であることは変わらないものの、<最優秀楽曲賞>だけでは見えなかったオルタナティブな要素を持つ楽曲や、ボーカロイド、演歌・歌謡曲といった日本発祥のジャンルが、各部門でフィーチャーされていることがわかる。

 さらに、部門ごとの国/地域別ストリーミング比率を見ると、日本音楽の「届き方」の多様さが浮かび上がる。そしてその多様さは、まだ多くのリスナーに“発見”されていない音楽がこれだけあることを示している。

 <ダンス&ボーカル楽曲賞>や<ヒップホップ/ラップ楽曲賞>は国内比率が8割を超え、まだ国内需要が中心だ。ただしヒップホップ部門のストリーミング数3位にはフランス(1.1%)が入っている。ヒップホップが文化として根付いた国で、日本のヒップホップが微少ながらも届いているということは、展開次第では今後の広がりが期待できるかもしれない。<オルタナティブ楽曲賞>でも同様に、インディーシーンが盛んな台湾(2.3%)が3位に入っており、同じ文脈で読むことができる。

■<ヒップホップ/ラップ楽曲賞>プレイリストはこちら(SpotifyApple Music

■<オルタナティブ楽曲賞>プレイリストはこちら(SpotifyApple Music

 また<インストゥルメンタル楽曲賞>は、他部門と比べて突出して高い海外比率を誇る。ストリーミング数の1位はアメリカ(34.0%)、日本は2位(24.4%)、3位にはドイツ(4.2%)が入る。言語の壁がない楽曲が、他とは異なるルートで世界に届いていることが示されている。

■<インストゥルメンタル楽曲賞>プレイリストはこちら(SpotifyApple Music

 クロスボーダー・コラボレーション楽曲賞は、トップ3以外の「その他」が42.7%と今回調査した10部門のなかで最も高い。コラボレーション相手の出身やジャンルによってリスナーが世界各地に分散するためだ。日本(35.4%)、アメリカ(15.0%)、韓国(7.0%)に次いで聴かれているのは、台湾、メキシコ、ドイツで、いずれも4%前後となっている。日本のアーティストが世界とどんな形でつながっているのか、そのリアルがこの部門には詰まっている。

■<クロスボーダー・コラボレーション楽曲賞>プレイリストはこちら(SpotifyApple Music

 そして最優秀アジア楽曲賞では、ストリーミング数1位がインドネシア(19.3%)、2位がフィリピン(16.5%)、3位がアメリカ(11.8%)と、日本はトップ3圏外だ。ここにエントリーされているアーティストの中から、次に日本で注目を集めるスターが出てくるかもしれない。

■<最優秀アジア楽曲賞>プレイリストはこちら(SpotifyApple Music

 部門ごとに聴かれている地域も、広がり方も異なる。2,000作品のエントリーは、その広がりをそのまま映し出している。

発見の場としてのMAJ、その可能性

 国内では新たなアーティストが次々と“見つかり”、海外では日本の音楽がさまざまな経路で届き始めている。ジャンルや言語を飛び越え、たくさんの音楽が今この時も鳴り続けている。国内部門はもちろんのこと、「Best Global Hit from Japan」「最優秀アジア楽曲賞」など日本と世界をつなぐ部門、「リバイバル楽曲賞」「ロングヒット楽曲賞」など豊富な国内カタログをクローズアップする部門、そして今年から新設されたライブスタッフへの表彰まで。MAJは多様な視点で国内外の音楽を映し出そうとしている。

 MAJ2026は、ただいま最終投票を実施中。6月13日、主要部門を発表するGrand CeremonyがTOYOTA ARENA TOKYOで、その他の部門を発表するPremiere CeremonyがSGCホール(TOKYO DREAM PARK)で、それぞれ開催される。また、NHKでの生放送・YouTube全世界配信も予定されている。昨年の京都から東京へと舞台を移したこの場で、何が選ばれ、何が語られるのか。日本の音楽シーンの現在地が、6月13日に問われる。


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