「挨拶もしないで!」ガソリンスタンドで激怒され…千葉テレビ・スタッフ3人で奔走する異例“トラック番組”の裏側

千葉テレビの番組『トラック人生1本道』で話題となった清水ゆきか運転員(21)(YouTubeより)

「物流の2024年問題」から丸1年以上──2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に「年960時間」の上限規制が適用された。労働環境の改善が期待される一方、労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、モノが運べなくなる懸念が現実味を帯びている。

 同様の「2030年問題」も叫ばれている。ドライバーの高齢化は著しく、大型トラック運転手の平均年齢は7.5歳。若い世代のなり手不足は深刻さを増している。

 そんな重苦しい課題に、一石を投じたのが千葉テレビの『トラック人生1本道』だ。YouTubeチャンネルにアップされた動画が話題を呼ぶことも。中でも前編で紹介した女性ドライバー・清水ゆきかさん(21)の回は、約80万回再生という異例のヒットとなった。なぜ今、トラックドライバーにスポットライトを当てたのか。そこには、プロデューサーの中村剛氏(30)自身の“原体験”があった。中村氏に話を聞いた。【前後編の後編。前編から読む

──数ある職業の中で、なぜトラックドライバーに密着しようと考えたのですか?

「きっかけは偶然でした。実は別の番組で運送会社さんを取り上げる機会があって、その時に制作会社のディレクターに『助手席に乗るシーンを撮ってみたい』と提案してみたんです。実際に撮ってみたら、『これ、すごく面白い画(え)になるぞ』と直感しました。

 それに、私自身の個人的な想いもありました。実は私の兄も石膏ボードなどの建築資材を運ぶドライバーをやっていますし、友人にも食材や日用品の宅配を頑張っているドライバーがいます。

 色々な運送会社さんを回ると、やっぱり平均年齢が50歳とかで、現場は高齢化が進んでいる。『2024年問題』も念頭にありましたが、何より彼らが汗水垂らして働いている現状を、もっと世の中に伝えたい。そう思ったのがスタートでした」

──これまでに20社以上の会社に密着されています。取材交渉などは大変だったのではないですか?

「それが、どこの会社さんも意外なほど協力的だったんです。『ドライバーにフォーカスを当てた番組なんて今までなかったから、ぜひやろう!』と、むしろ歓迎ムードでした。我々は千葉県のローカル局ですが、千葉に限らず、茨城や群馬など関東近郊の運送会社さんの協力いただいています」

──現場の熱量はすごいですね。制作面で苦労されたところはありますか?

「なんでも自分たちでやらなければいけないところですかね。例えば、ロケ隊はたった3人です。ザ・ローカル局という感じです(笑)。

 助手席に乗るディレクター、追走車の助手席に乗るサブディレクター、そして追走車を運転する私。カメラマンが編集もやって、なんなら番組の主題歌まで作って歌っているんです。カメラマン兼、編集兼、主題歌担当ですね。

 それから、番組スポンサーへの営業回りも、私自身で行いました。『こういう番組を作りたいんです!』って、企画書を持って。全て自分たちでやらなきゃいけない環境でしたが、だからこそ自由に、熱量を持って作れた部分はありますね」

──トラブルはつきものだったのでは?

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