【焦点】トランプ関税、90日間の猶予終了で発動迫る-迷走の末

世界経済はここ3か月間、関税を巡るトランプ米大統領の発言が二転三転する中で不透明な状況が続いていたが、9日にその行方が明らかになる見通しだ。トランプ氏が掲げる貿易合意の締め切りが到来するためだ。

  この日は、各国・地域に対する上乗せ関税に関する90日間の猶予期間の終了日に当たり、トランプ氏が目指す貿易赤字縮小や製造業復活に向けた関税の発動される見通しだ。

  トランプ氏の一方的な関税政策は、長年にわたって世界貿易機関(WTO)の下で進められてきた貿易障壁緩和という国際的な取り組みを揺るがしている。

  トランプ氏は貿易同盟の枠組みを見直しているだけではない。今回の関税措置は米国の歳入を補う手段でもある。

  トランプ氏は4日、3兆4000億ドル(約491兆円)規模の大型減税・歳出法案に署名し同法を成立させた。米財政の持続可能性を疑問視する投資家が増える中、歳入を増やす必要性が一層増している。

  トランプ氏は上乗せ関税発動を予定している8月1日について、「8月1日から米国にお金が入ってくる」と述べている。

  7月9日の期限を前に、交渉担当者たちは貿易協定の取りまとめに向けて奔走している。

  ベッセント米財務長官は、貿易をトランプ政権の政策の3本柱の一つと位置付けており、他の2本である減税と規制緩和とともに、投資促進、雇用拡大、イノベーション加速を目指すと説明している。

  今のところ、米経済は底堅く、雇用は堅調でインフレも抑制されている。それでも、米連邦準備制度理事会(FRB)はトランプ氏から利下げを求める圧力にもかかわらず慎重な姿勢を崩していない。今後数カ月で関税が生産にどう影響するかを見極めたい考えだ。

  トランプ氏の貿易政策は市場に不透明感をもたらしており、企業のサプライチェーン担当者は生産や在庫、雇用、インフレ、消費需要への影響を見極めようとしている。

  関税を巡るトランプ氏の度重なる方向転換は、企業の意思決定をさらに困難にしている。

  トランプ氏は「関税」を好きな言葉だと公言している。しかし、経済への実際の影響は、貿易相手国が直接関税を支払うと誤認している同氏の見通しを覆す可能性がある。

  実際には、負担の多くを担っているのは米国の輸入業者であり、利益率が圧迫される中で消費者への価格転嫁、海外の仕入れ先への値引き交渉、両方の組み合わせといった対応を迫られている。

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の試算によれば、予告通りに9日に関税引き上げられた場合、米国の全輸入品にかかる平均関税率は、トランプ氏が就任した1月時点の約3%から、およそ20%にまで上昇する可能性がある。これは米経済見通しに対するさまざまなリスクをさらに高めることになる。

  来週はこのほか、米連邦公開市場委員会(FOMC)の最新議事要旨が発表されるほか、オーストラリアで利下げの可能性がある。主要新興国グループ「BRICS」の首脳会議も6日からブラジルで開催される。

関連記事:BRICS首脳会議、トランプ関税非難声明を準備-6日ブラジル開催

  利下げに向けた当局の姿勢に変化あるかどうかを見極めるため、エコノミストは9日に公表される6月のFOMC会合の議事要旨に注目している。

  オーストラリア準備銀行(中央銀行)は8日に政策金利を3.6%へ引き下げるとみられている。3会合連続の利下げとなる見通しだ。

  欧州では11日に英国の5月の国内総生産(GDP)が発表される。4月に2023年以来の大きな落ち込みを記録した後だけに注目される。

  ユーロ圏でも4日に発表されたドイツの5月製造業受注が市場予想を大きく下回ったことを受け、各国の製造関連指標に注目が集まる。トランプ氏の関税政策が製造業に影響を与えているかどうかの目安になる。

原題:Trump Tariff Date Arrives After 90-Day Rollercoaster: Eco Week(抜粋)

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