6年生が河原で拾った「ただの石」実は半世紀ぶりの大発見!論文にも:朝日新聞

小学6年生が河原で拾った「ただの石」を調べたところ、非常に珍しい構造を持った石だったことが分かりました。同様の石が日本で発見されたのは半世紀ぶりで、国内2例目とのこと。発見した当時・小学生の女の子は、東大や早大の研究者とともに論文の共著者に名を連ねました。(朝日新聞withnews編集部・山野拓郎)

「化石が見つかるかもしれない」

2024年10月、成蹊小学校(東京都武蔵野市)の6年生だった小田切愛菜さんは、先生のそんな言葉を受けて、学校の野外学習で埼玉県小鹿野町の河原を訪れました。

小田切さんが発見した石。一見するとただの石にしか見えませんが、実は珍しい構造を持った石だということが分かりました=東京都武蔵野市、山野拓郎撮影

友だちと一緒にサメの歯の化石を見つけようと、河原の石を調べていました。

ふと、「他の石と比べて分厚い」一つの石に目がとまりました。

灰色で、大きさは長さ約6センチ、横幅約4センチ、高さ約4センチ。一見するとその辺に転がっている「ただの石」のようにしか見えませんでしたが、表面に刻まれていたギザギザを見て、「ちょっとサメの歯に似ているかな」と感じたからでした。

貴重な構造を持つことが分かった石を持つ発見者の小田切さん=東京都武蔵野市、山野拓郎撮影

残念ながらそれはサメの歯の化石ではありませんでした。普通なら石を河原に戻して帰ってしまうところですが、このときの野外学習には岩石の専門家で成蹊大学理工学部教授(現・成蹊学園サステナビリティ教育研究センター客員研究員)の宮下敦さん(地質学)が同行していました。

小田切さんから石を見せられた宮下さんは、その「ギザギザ」が希少な構造をもつ石だとひらめきます。石を持ち帰って詳しく調べたところ、国内ではこれまでに1例しか報告されていない「コーン・イン・コーン構造」を持つ石だと分かりました。

謎の「多重円錐構造」を持った石

宮下さんによると、コーン・イン・コーン構造は、地層の中で堆積(たいせき)岩の一種である炭酸塩岩ができるときにまれに生じる構造です。

アイスクリームのコーンのような三角形を幾重にも重ねたようにみえることから、そう呼ばれています。多重円錐(えんすい)構造とも呼ばれる謎めいた模様がなぜできるのかは、まだよく分かっていません。

小田切さんが発見した石。コーン・イン・コーン構造という珍しい構造を持った石だということが分かりました=東京都武蔵野市、山野拓郎撮影

海外では数多く発見されていて、石油を含む地層で見つかることも。「石油ができるときの条件を解明するのに役立つかもしれない」として複数の研究が行われています。

しかし、日本列島では昭和50年代に東京都内にある地層の1カ所から発見されただけ。小田切さんが拾った石は、国内で2例目、およそ半世紀ぶりの発見でした。

宮下さんは「日本ではコーン・イン・コーン構造の研究をしようにも、研究するための標本がそれまでは1例しかなかったので、研究のしようがない状況でした。小田切さんの発見で、どうしてこういう構造ができるのかという研究がこれから始まると思います。石だけでなく、将来的には地層や石油がどうやってできるのか、そういう大きな謎の解明にもつながる発見だと思います」と話しました。

小田切さんは宮下さんらの研究チームとともに、肉眼や顕微鏡で石を観察してスケッチするなどの分析を進めました。

小田切さんが石を観察して作成したスケッチ。石の特徴についても詳しく記述されています=東京都武蔵野市、山野拓郎撮影

研究者が石から削り取った粉末をX線や同位元素分析装置を用いて分析したところ、コーン・イン・コーン構造の部分は針状の方解石の結晶と石英の粒の混合物でできていることが分かり、今年4月に発行された日本の地学界を代表する科学誌「地学雑誌」に論文が掲載されました。

「埼玉県小鹿野町赤平川河床から発見されたcone-in-cone構造をもつ炭酸塩岩転石」と題した論文には、宮下さんや東京大学早稲田大学の研究者らとともに小田切さんも共著者として2番目に名を連ね、小田切さんのスケッチをトレースした図も論文に採用されました。

「専門家でも見つけられない」

宮下さんは、小田切さんの発見以降、石が見つかった河原や近くの地層に何度も通ってコーン・イン・コーン構造の石を探していますが、いまだに一つも見つかっていないそうです。

宮下さんは「地質学者が集まって調査に行っても、貴重な石を見つけられる人と見つけられない人がいる。小田切さんは貴重な石を見分けるセンスを持っている。目のつけどころがいいので専門の研究者でもできない発見ができたのだと思います」と小田切さんをたたえました。

小田切さんは現在、成蹊中学校2年生で、ソフトテニス部の活動に打ち込んでいるそうです。貴重な石を発見した経験から「チャレンジ精神の大切さ」を学んだといいます。今春の体育祭では、自ら「幹部」というリーダー的な役職に立候補しました。

小田切さんは「最初はこの石がそんなにすごいものとは思っていなくて、『一応先生に出してみようかな』というくらいの気持ちでした。でも、それが発見につながったので、これからの学校生活でも、そこまで自信がなくても何事も1回チャレンジしてみようという気持ちを持ち続けていろいろなことに挑戦していきたいと思います」と話しています。

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この記事を書いた人

山野拓郎
デジタル編成本部
専門・関心分野
コミュニケーション・情報教育

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