《東浩紀氏が分析する総選挙とリベラルの現在地》立憲は「血の通わない希望的観測」を語るメディアや知識人に囲まれ、判断を誤った(NEWSポストセブン)
* * * 総選挙は中道改革連合の自滅だ。自民党に批判的な旧立憲民主党の支持者の大部分が離れた。 敗因は旧立憲と旧公明党の党首2人のトップダウンで合流が決まった一連の流れにある。 共同幹事長を務めた安住淳氏の普天間飛行場の辺野古移設についての発言の変転が典型的だが、安全保障や原発をめぐる従来の政策との一貫性はない。執行部は今回、選挙に勝てるからと説いて、党内左派も含めて政策変更をのませた。 当然、変更の理由を有権者に説明する以外に支持層をつなぎ留める方法はないのに、その努力はほとんど払われていない。 しかも変更をのんだはずの候補者が、「入った上で(原発再稼働反対運動を)頑張りたい」とSNSに投稿し、批判を浴びるといった醜態も晒した。 執行部も候補者も人間としての信用を失ったうえに結果は惨敗。もはや立ち直りは不可能だろう。 そもそも自民を批判すべきポイントはいくつもあったはずだが、中道の自滅が、裏金議員には「禊が済んだ」と言い逃れる根拠をもたらした。政治の緊張感は遠のき、新たな腐敗が起きるだろう。 メディアやリベラル知識人の罪も大きい。選挙後に「小選挙区制の歪み」を指摘する声が一部から上がったが、事前には中道大勝による政権交代のシミュレーションを報じていたはずだ。 旧立民もこうした血の通わない希望的観測を語る知識人に囲まれ、判断を誤ったのだろう。
直視すべきは国民の底流にあるものだ。昨年、参政党が躍進したのは、外国人への不安という「鉱脈」を見つけたからだ。国力が低下する一方、外国人による不動産取得や観光客が増えるなかで、人々の不安が強まっていた。参政党が作ったものではなく、社会の底流からすくい取ったものだ。 ところがリベラルは、「参政党はデマをばら撒いている」といった批判に終始し、国民の不安から目を逸らしてきた。 話を聞いてくれそうにない知識人やメディアを国民は信頼しなくなり、「話を聞いてくれそうだ」と感じさせてくれた高市氏に期待した。この失敗を謙虚に直視しなければ再生はありえない。 もう一つ。チームみらいが野党第4党へと躍進したことは、別の意味で重要な出来事だ。みらいは資本家寄りの政党だと思うが、今回はリベラルも投票していた。 35歳の安野貴博氏の存在感によってニューリーダーに期待される年齢が若返り、自民の小林鷹之氏や小泉進次郎氏ら40代より下になった。 今後が焦点だが、ネオリベ野党として国民民主党と接近する可能性はある。経済成長や新しいAI産業構造に向けた集中投資を志向する都市型ブルジョア政党の結集だ。 政治経験がある玉木雄一郎氏らが安野氏を支えるなら求心力が生まれそうだが、それでは疲弊する地方や低所得の労働者にまで目が届かない。 すでに左右の対立は無効化されているが、今後は階級差が重要になる。新勢力の誕生が期待されるが、旧体制の自民やネオリベ政党に対抗するにあたり、大学知識人がブレーンを務めるようでは支持は得られないだろう。既得権益層が弱者救済を語る構図そのものがフェイクだと見なされている。今回の変化はそれほど根底的なものだ。 【プロフィール】東浩紀(あずま・ひろき)/東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。著書に『動物化するポストモダン』『平和と愚かさ』など多数。 ※週刊ポスト2026年2月27日・3月6日号