「泉氏が選挙後に告訴される?」「引退と引き換えに裏取引?」 暴言受けた明石市議ら否定
20日投開票の参院選兵庫選挙区に無所属で立候補している前明石市長の泉房穂氏(61)について、「選挙後に刑事告訴されるのでは?」との言説が動画投稿サイトなどで広まっている。3年前に市議らに暴言を浴びせた責任を取って引退を表明した泉氏が「政治家引退と引き換えに刑事告訴をしないよう裏取引をしていた」という内容だ。しかし、実際に暴言を受けた市議らは、当時の取引や参院選後の刑事告訴を否定している。
■ユーチューバー発信、立花氏もXで拡散
泉氏は2022年10月、自身への問責決議案提出を予定していた明石市議らに対し、「次の選挙で落としてやる」「賛成したら許さんからな」などと市議と元市議の計3人に暴言を浴びせ、その責任を取って引退を表明した。
今回、泉氏の引退時に裏取引があったかのような言説が広がるきっかけになったのは、今年7月16日にユーチューバーが次のようなタイトルで投稿した動画だった。
「【独占スクープ】泉房穂が隠している『政治家引退宣言』の裏で行われた市議との取引が…」
動画の中でユーチューバーは「このまま当選したら、十中八九刑事告訴される流れになることをお忘れですか?」と問いかけ、泉氏のかつての暴言に言及。「実は表に出ていない交渉があった」として、「(泉氏を)刑事告訴をするっていう話が浮上していたんです。それを何とかもみ消したかった。泉房穂がとった行動は何ですか。そう、二度と政治に関わらないから、刑事告訴はやめてくれって、こいつ、頼んだんです。これが泉房穂の引退発言の理由なんです」とした。
この動画は17日時点で約27万回再生された。
これを受け、泉氏と同じく参院選に立候補している政治団体「NHK党」党首の立花孝志氏(57)も16日にX(旧ツイッター)へ投稿し、「ついに来ました大爆弾!」などの言葉とともに動画を紹介。17日午後までに44万回表示され、千回以上リポストされた。
この他にも「明石市議の刑事告訴に震えとけ」「告訴の可能性有り メディアは隠蔽か 兵庫県民は騙されるな」などと関連投稿も拡散されている。
神戸新聞の「ファクト検証」調査依頼フォームにも、真偽の確認を求める書き込みがあった。
■刑事告訴の裏取引、当事者ら「当時も今も一切ない」
22年当時に泉氏から暴言を受けた当事者らに以下の3点を取材した。「泉氏の政治家引退と引き換えに刑事告訴をやめるよう持ちかけられたことはあるか」「刑事告訴を検討したことはあったか」「参院選後に刑事告訴を考えているのか」
当時泉氏から「次の選挙で落としてやる」と言われた榎本和夫市議は取材にこう話した。
「泉さんとは常に対峙(たいじ)していて、当時はもう絶縁みたいな状況だったので、一切そういう話をするようなことはなかった。私自身、告訴をしようと考えたことも、今後することもない。引退表明のとき私は議長で、本会議で市長を指名したら急に引退を言い出した。議会運営委員会でも何の話もなかったので、議会としてもびっくりしたと思う。政治家引退と告訴の取り下げを取引したなんていう話は、当時もその後も聞いたことがない」。その上で、今回の動画拡散について「巻き込まれて戸惑っている」とした。
当時泉氏から「賛成したら許さんからな」と言われた公明党の女性市議は、神戸新聞の記者が電話をしているが17日午後時点でつながらない。ただ、市議から状況を聞いて対応を任されていた市議会公明党幹事長の梅田宏希市議は「当時はこの市議が対応できなかったので、私がすべての窓口になっていた。当時も今も、刑事告訴をするという話はないし、引退との取引の話もない」と断言した。
当時、公明党の別の元市議1人も同様に泉氏から暴言を受けたが、梅田市議は「その人も含めて告訴の話はない。動画では臆測を言っているのだろうが、私たちがそれにのっかることはない」とした。
■参考記事