「クマに遭遇し決めた」秋田県で今年度最初の狩猟免許試験、58人受験 マタギ文化継承も
クマの出没・被害が増える中で14日、秋田県の令和8年度最初の狩猟免許試験が行われた。国家試験の狩猟免許は各都道府県が試験を行い、免状を交付する。試験は網猟、わな猟、第一種・第二種銃猟がある。秋田県の第1回試験は県森林学習交流館(秋田市)で行われ、辞退の2人を除く58人が受験。1人で複数受験できるため網、わな、第一種銃猟を延べ90人近くが受験した。
「何かの際に役に立てるよう」
会場では午前10時に県の担当者が受験者に試験の流れなどを説明。各試験とも知識、適性、技能の3分野あるため夕方まで続いた。
狩猟免許試験の流れについて担当者から説明を受ける受験者ら=6月14日、秋田県森林学習交流館「昨年12月に銃猟を受けたので、今回はわなを受けた」と話す北秋田市の会社員男性(50)。祖父から続くマタギの家系で「自分の家族には猟師になるのを反対されていたが、クマ被害急増もあって受験した。すでに銃猟には何度も出ている」という。
実家が北秋田市の阿仁地区でマタギという秋田市の会社員男性(39)も「マタギ文化を受け継ぐため、手始めに網とわなを受けた」。
わなを受けた秋田市の会社員男性(31)は「キャンプなどアウトドアで過ごすことが多いのでクマが心配。何かの際に役に立てるよう受験した」。
夫(55)と一緒に銃猟を受けた潟上市の自営業女性(48)は「自宅近くで犬の散歩中にクマに遭遇したことがあり、2人で受験しようと決めた」と話していた。
産経新聞記者が住宅街で遭遇した子グマとみられるクマ=2025年11月、秋田県北秋田市(長谷川毬子撮影)全5回の定員埋まりそうな勢い
今年は全国的に春先から人生活圏での目撃件数が多く、秋田県も年初から出していた「クマ出没注意報」を4月14日に「警報」に切り替えて継続。5月以降に人身被害が続き、6月9日現在で1人が死亡、4人が負傷。いずれも自宅近辺など生活圏での被害だった。
人生活圏でのクマ出没・人身被害が5年度から全国的に急増したことで、狩猟免許試験への関心も高まっている。
秋田県では6年度は全4回の試験のうち2回が定員超過で出願できない人が出た。このため県は7年度から実施を1回増やして計5回にしたが、それでも12月の第5回試験で出願できない人が出た。
この事態に県自然保護課は「試験が3分野で時間がかかり、会場確保の都合もあって出願者実数の定員を毎回60人にしている。出願できない人がいないよう対応したい」と話していたが、結局、今年度も定員はそのままとなった。
今年度の試験も計5回で、4月20日の受け付け開始後どの回にも出願できるため、当初から第2回以降に出願する人がいる一方で「第1回を希望しても定員超過で出願できない人が複数おり、第2回以降を案内した」と担当者。
「第1種銃猟はすでに12月の第4回まで定員となり、来年1月の第5回も埋まり始めた。網とわなも7月の第2回まで定員になった。これほど出願が多いのは初めてだ」(同)と打ち明ける。
岩手は定員なし…339人出願も
隣接する岩手県もクマの人身被害が深刻で、年3回実施の狩猟免許試験は定員を設けておらず、7年度は計625人と、出願者が前年度比3割増加。県自然保護課の担当者は「特に12月の第3回試験には339人が出願しており、今後も定員を設けずに行えるかわからない」と話していた。
8年度第1回試験は宮古市で行うが、会場の都合からわなと第1種銃猟のみの実施で、やはり定員は設けていない。受け付けは6月10日に締め切り、出願実数132人で、重複を入れると、わな109人、第1種銃猟69人に上る。
担当者は「第1回は会場が広くないので、出願者全員を受け付けられるか薄氷を踏む思いだった。試験準備や当日の運営など人手の面も大変だが、滝沢市の県立大で行う第2、3回の受け付けはこれからで、会場も広いので出願できない人が出ないよう努めたい」と話している。(八並朋昌)