斎藤元彦氏公選法違反事件、「追加告発」を含め、改めて解説する

法律

斎藤元彦氏HPより

2024年11月の兵庫県知事選挙をめぐる斎藤元彦知事らの公選法違反事件、刑事処分に向けた捜査は、最終段階に入っていると考えられます。そう遠くない時期に神戸地方検察庁が刑事処分を行うことになると思われます。その際、事件の社会的影響を考えれば、公選法違反事件としての内容が、世の中に、とりわけ、兵庫県民の皆さんに、正しく受け止め理解される必要があると考えられます。

最近の検察庁の運用では、起訴の場合も不起訴の場合も、刑事処分の内容や理由についての説明はほとんど行われておらず、検察の説明では、事件の内容や処分の理由を理解することはできないのが実情であることを考えると、今回の公選法違反事件については、別途、事実関係や関連する公選法の解釈などについて、全体を取りまとめて、その内容を公表することが必要と考え、いくつかの記事に分けて解説を皆さんにお送りすることにしました。

昨年12月初めに私と神戸学院大学上脇博之教授が告発を行い、告発状を公表した後に、多くの兵庫県民の方々から情報資料が提供され、マスコミで報道されたものも含め、把握した資料・情報は相当な量に上っていました。それらについて、私の事務所「郷原総合コンプライアンス法律事務所」の法務コンプライアンス調査室長の佐藤督とともに逐次取りまとめを継続してきました。

関連する公選法の判例・文献などを幅広く収集し、分析検討する中で、本件は、221条1項1号よりむしろ221条1項2号の「利害誘導罪」を適用すべき事案ではないかと指摘してくれたのが佐藤で、私の入院中のことでした。退院後、私の方でも検討した結果、「斎藤氏の代理人の奥見弁護士の説明を前提としても利害誘導罪に該当することは否定する余地がない」との判断に至り、上脇教授とも協議した上、今年9月5日付けで、神戸地検に追加告発状を提出しました。

追加告発といっても新たな事実を追加したのではなく、当初の告発状では公選法221条1項1号の「買収罪」として告発事実を構成していたのを、221条1項2号の「利害誘導罪」にも該当するということで、再構成した告発事実を追加し、検察官としての起訴事実の構成の選択肢として提示したものです。

もちろん、我々告発人側としては、当初から買収罪についても嫌疑は充分だと考えており、現時点までに捜査機関が収集した証拠から、当初の買収罪で起訴の可能性も十分あります。しかし、捜査結果や収集された証拠の中身は知りようがありませんので、被疑者側の弁解を前提にしても公選法違反を免れることができないと考えられる罰則適用と事実構成がある以上、それを選択肢として提示しておくことが必要と考え、追加告発状という形で神戸地検に提出したものです。

この追加告発状提出については、まず検察庁の方で充分にその内容を把握して、刑事処分に向けての検討に活かして頂くことが必要だと考え、公表は行わず、これまで本件について問題意識を持って取材してくれていると認識している一部の記者に個別に情報・資料を提供するにとどめていました。

提供したマスコミの一部で、追加告発について記事化の動きがあるようですので、私の方でも、今回、数回に分けて出す解説記事の初回の本稿の中で、追加告発状提出にも言及することにしました(追加告発状で追加した公選法221条1項2号による告発事実と、利害誘導罪の解説は、別途、個人ブログ「郷原信郎が斬る!」に掲載しています。)。

なお、私は、7月中旬に、悪性リンパ腫でICUに緊急入院し、一般病床に移った後も、治療のため入院が続いていましたが、8月29日には退院して通院治療に切り替えることになり、退院後の経過も順調で、現在では抗がん剤の副作用による免疫抑制のために感染リスクへの対応が必要となること以外は、ほぼ通常どおりの業務が行える状態になりました。

ここまで短期間で奇跡的とも思える回復ができたのは、緊急入院公表以降、私を支えてくれた家族や事務所スタッフ、そして、XやYouTubeなど私の発信へのコメントなどで、本当に多くの皆様から、お見舞い、励まし、私の回復を願う心のこもったメッセージを頂いたおかげだと、心から深く感謝しています。

こうして、ほぼエンジン全開とも言える状況になりましたので、今後、体調には留意しつつ、これまで以上に「法と正義」を取り戻すための活動に取り組んでいきたいと思います。

本稿では、昨年11月の県知事選直後に公選法違反疑惑が表面化した当初からの経過を振り返り、この事件について問題となるポイントを全体的に整理したいと思います。

2024年11月17日投開票の兵庫県知事選挙で斎藤元彦氏が当選した直後、同月20日に、広報・PRのコンサルティング会社「株式会社merchu(以下「merchu社」)の代表取締役折田楓氏が、斎藤氏からSNS広報戦略を任されたことと業務内容の詳細を自ら明かすnote記事を投稿しました。

同記事に関して、インターネット上で、同業務について斎藤陣営から報酬が支払われていれば公選法違反(買収)、無報酬だったとすると、merchu社から斎藤氏に対する寄附として公選法違反、政治資金規正法違反の問題が生じるとの指摘が相次ぎました。

11月27日の斎藤氏による兵庫県知事定例会見において、本件note記事に関する質問を受けて、同会見終了後に、斎藤氏の代理人の奥見司弁護士による会見がおこなわれ、斎藤氏側からmerchu社に支払ったのは、

(1)「公約のスライド制作 30万円」 (2)「チラシのデザイン制作 15万円」 (3)「メインビジュアルの企画・制作 10万円」 (4)「ポスターデザイン制作 5万円」

(5)「選挙公報デザイン制作 5万円」

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