靖国で「公人か私人か」繰り返す報道陣、稲田氏「意味のある質問ではない」神谷氏「不毛」
「公人か、私人か」─。長年繰り返されたマスコミによる質問は、81回目の「終戦の日」の15日も靖国神社(東京・九段北)で飛ばされた。「政教分離」との関係を確認する狙いからだが、そもそも政治家の公私をどこまで峻別できるのか。現職の防衛相が2年ぶりに参拝し、中国や韓国の反発を念頭に置いた質問は影をひそめるなど、靖国を取り巻く環境は変わりつつある。それでも、英霊の鎮魂に訪れた国会議員に対し、肩書や玉串料の支出元に関する〝公私チェック〟は今年も続いた。
英霊に尊崇の念を示すはずが…
「あまり意味のある質問ではない」
自民党の保守系グループ「伝統と創造の会」(伝創会)の稲田朋美元防衛相は参拝後、報道陣にこう指摘した。
稲田氏は玉串料は同会から支出し、記帳時の肩書も明らかにしたうえで「一政治家として、一国民として、英霊に対する尊崇の念を示すということは、非常に重要なことだと思う」と述べた。参拝に際し、公人か私人かを区別すること自体に疑問を呈した。
靖国に参拝した身分は「公人」としてか、「私人」としてか─。昭和50年の終戦の日に参拝した三木武夫首相が「私人」と強調して以降、マスコミは靖国に訪れる政治家にこの点を聞き続けている。
昭和60年には中曽根康弘首相が「公式参拝」に踏み切った。神道形式でなければ公式参拝は違憲ではないとする政府見解を受けた形だが、中国や韓国はいわゆるA級戦犯の合祀問題と絡めて反発。中曽根氏は翌年以降、参拝を見送った。
伝創会の長島昭久衆院議員は「公人か私人か」といった報道陣の質問について「もう最近、そんな質問をする人も少なくなったのではないか。それが常識化していくと思う」との見方を示した。
もっとも、この日の取材現場で記者が確認できた範囲では、参拝したほぼすべての政治家に対し肩書を尋ね、玉串料の支出元を確認する質問が繰り返された。
神谷氏「一人の日本人として」
靖国神社で参拝を終えた自民党の「保守団結の会」の高鳥修一衆院議員(手前)=8月15日午前10時7分、東京・九段北自民党の別の保守系グループ「保守団結の会」の高鳥修一衆院議員も、こうした質問に不快感を示した。新藤義孝元総務相は「私事で、これまでも明らかにしていない」と一蹴した。
この日、参拝した参政党の神谷宗幣代表も「不毛だ」と苦言を呈した。
参政党の神谷宗幣代表=8月15日午前、東京都千代田区(酒井真大撮影)「『私人だ、公人だ』といったところで、たたくことをやめてもらいたい。一人の日本人として当たり前に、国を守って亡くなられた方々に感謝を伝え、戦争が起きないよう平和を願う。そうしたことに対して(玉串料の支出元が)『個人のおカネか、党のおカネか』は論点ではない」
天皇陛下のご親拝を
一方、この日は数年前まで目立った、中国や韓国からの批判をあらかじめ想定し、それに対する見解を政治家に尋ねる質問は確認されなかった。
靖国を取り巻く空気には変化もみえる。
「防衛相が参拝できる、そういう環境にもなってきたかなと思う」
稲田氏は、木原稔防衛相(現官房長官)以来2年ぶりとなる小泉進次郎防衛相の靖国参拝を歓迎してみせた。
自身が防衛相だった平成28年の終戦の日は参拝を見送った。稲田氏は「8月15日は、いろいろな状況のなかで、参拝が非常に難しいというか、できなかった」と振り返り、「自らの国は自らで守るという意思を示すという意味でも、靖国参拝は非常に意味がある」と強調した。
前出の長島氏も、かつて天皇陛下によるご親拝や首相による参拝が行われていたことに触れ、「そういう正常な状況に戻していく努力も非常に大事な課題だ」と述べた。(奥原慎平)