詐欺対策の「ナンバーディスプレイ」が"ワナ"になり被害に…大手IT騙る「03」サポート詐欺の手口(弁護士JPニュース)

怪しい電話には出ない。シンプルだが確実な詐欺対策だ。そこで、自宅の固定電話にナンバーディスプレイを設定し、知らない番号にはできるだけ出ないよう、特に高齢者は身構える。だが結局、この対策は被害抑止にはつながらなかった…。 「表示される番号はいくらでも変えられます」。詐欺に詳しいルポライターの多田文明氏はその理由を明かす。実際に同氏が見聞した手口から、“番号偽装”の実態に迫るーー。 ※ この記事は悪質商法コラムニスト・多田文明氏の書籍『最新の手口から紐解く 詐欺師の「罠」の見抜き方 悪党に騙されない40の心得』(CLAP)より一部抜粋・再構成しています。

電話による詐欺を防ぐために、「電話機の番号表示の設定をしてください」との注意喚起がなされたことがある。 いわゆる「ナンバーディスプレイ」にして、もし知らない番号からの電話なら受話器を取らず、知っている番号のみ対応する。そうすれば、振り込め詐欺を入り口の時点で遮断でき、騙されることはないとするものだ。 だが、最近はこうした注意喚起はあまり耳にしない。それは、この注意自体があまり機能しなくなっているからに他ならない。

考えてみれば、電話はいろんなところからかかってくる。役所などの公的機関、電気やガス会社、はたまた宅配便からの連絡もあるだろう。 番号だけを見て、電話をとるかとらないかを咄嗟に判断するのは、極めて難しい。判断がつかない高齢者は、結局、すべての電話をとってしまうのだ。 注意喚起には、「事前に、友人、知人の電話番号の登録をしておき、その人以外からの電話はとらないようにしましょう」というものもある。 だが、携帯電話ならいざ知らず、固定電話で、毎回、電話番号の登録をまめにしている人は少ないのが実状ではないだろうか。 それに、知人のなかには、携帯などの番号がよく変わる人もいるだろう。最近では、スマホを持ち、SNSを使いこなし、交流活動を活発にして友人をつくるアクティブシニアも増えている。 知らない電話番号であっても、「もしかすると最近知り合った友達からかもしれない」。そう思えば、電話に出るに違いない。 ゆえに、「知らない番号の電話は、絶対に取らない」というのは、現実的に考えて無理がある。それどころか、電話番号の表示自体で私たちをダマすこともあるのだから、かえってハイリスクともいえる。


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「オレだけど」という息子の声で電話がかかってきた。 息子は東京に勤めており、番号も「03」だ。ゆえに、東京に住んでいる息子からの電話だろうと思うのは、早計だ。 大阪の人が「06」からかかってきた電話をとったら、市役所の国民健康保険課だった。だから、地元の役所だろう。そう考えるのは拙速だ。 なぜなら、電話番号の表示は、いくらでも偽ることができるからだ。 私も詐欺業者に電話をかける際、相手が「0120」のフリーダイヤルを使用していたり、「03」の固定番号から電話がかかってきているはずなのに、相手の声に混じって繁華街の雑踏らしき騒音が聞こえてきて、外で携帯で話しているとわかったりすることもある。 いまは、転送などの手段によって、電話番号の表示をいくらでもカモフラージュできるようになっているのだ。

一時期、流行ったものに、ネット検索をしていたり、動画サイトをみようとすると、突然、「ビービービー」という音が鳴り響き、画面に「あなたのパソコンがウィルス感染しています……」「セキュリティの問題が発生しました」などといった警告メッセージが出す手口があった。 なかには、「あなたのパソコンをロックする」という自動音声の脅迫的なアナウンスが流れることも。 慌てて画面をみると、「03」から始まる、大手IT企業のMソフト・サポートセンターの電話番号が載っている。 そこで、本当にあの大企業なのか確認のため、電話をかけてみた。すると、「こちらは、Ⅿソフト・サポートセンターです」と、片言の日本語を話す外国人のオペレーターが出てくる。 「どう~しましたかあ?」 「警告音が鳴りやみません」 「わかりました。それでは、パソコンの状況を確認しますので、これから言うように、操作をしてくださいよ」 相手の指示通りに操作を進めていくと、「ウィルス感染があるかないかを調べます」という名目で、遠隔操作のソフトをインストールするようにいわれる。 インストールすると、パソコンをリモートでコントロールしながら、マウスのポインターが勝手に動く様子などを見せながら「パソコンがウィルス感染して、重大な危機になっています」と訴えてくる。 最終的には、1万円から3万円ほどのウィルス駆除のためのセキュリティソフトの費用を請求してくるのだ。 当然ながら、この連絡先は、大手のMソフト社とは、なんの関係のない業者だ。

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