進次郎農水大臣のほうがよっぽどマシ…高市政権に潜り込んだ「コメの値段を下げたくない農林族」の正体(プレジデントオンライン)

自民党と維新の連立政権下で、コメ価格は下がるのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「合意文書のなかに過去に例がないほどに高騰しているコメ価格を下げる政策について言及がなかった。食料品の消費税をゼロにしても、農業保護のために高価格維持政策を行う農政の転換をしない限り、物価高対策は叶わない」という――。 【図表】「進次郎大臣のほうがよっぽどマシ」の理由 ■コメ問題を完全スルーした「合意文書」  自民党と日本維新の会は、食料・農業について、次のとおり合意した。20日に両党が交わした「連立政権合意文書」より抜粋する。 ---------- 飲食料品については、2年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化につき検討を行う。 食料の安定供給確保が、国民の生存に不可欠であることの認識を共有し、全ての田畑を有効活用する環境を整え、厳しい気候に耐え得る施設型食料生産設備(いわゆる植物工場および陸上養殖など)への大型投資を実現する。 ----------  何かおかしくないか?  今、国民消費者を最も苦しめているコメ問題について完全にスルーしているのだ。これで物価問題を解決するというのだろうか?  また、植物工場は、食料・農業問題について全く知識のない高市氏が面白いと思って飛びついただけのもので、商業生産できるのはせいぜいベビーリーフなどの葉物が主で、カロリー供給の中心となり食料安全保障上重要な穀物の生産は高価な人工光を大量に投下しなければならず不可能なのだ。陸上養殖も設備投資やランニング費用がかかりすぎるという問題がある。

■消費税の逆進性  消費税については、“逆進性”が問題とされてきた。所得の低い人も高い人も、生きていくためには、飲食料品を消費しなければならない。飲食料品は必需品の最たるものである。  しかも、胃袋は同じ大きさなので、飲食料品の消費量は、所得の低い人も高い人も大きくは変わらない。所得の高い人は、食べる量が同じであっても、贅沢な食材を使ったり、高級レストランに通ったりするかもしれない。しかし、可処分所得が高いので、それに占める飲食料品支出の割合は、貧しい人に比べ、少ない。  つまり、所得に応じて累進的に税率が高くなる所得税に比べ、所得の低い人も高い人も、同じように飲食料品などの必需品には支出するので、飲食料品の価格を消費税で高めれば、所得の低い人の負担がより高いことが問題とされてきた。これが逆進性の議論である。 ■消費税より深刻な「農政の逆進性」  しかし、飲食料品の価格を高くすることによる逆進性は、消費税だけの問題ではない。農政の逆進性の方がはるかに重大なのだ。  消費税の対象は飲食料品すべてである。これには主食であるコメなどの必需品だけでなく、キャビアや高級ワインなど所得の高い人が購入する奢侈品も含まれている。奢侈品について消費税を課しても逆進性の問題があるという人はいない。貧しい人は買わないからだ。必需品より奢侈品の方が単価は高い。飲食料品の消費税をゼロにすれば所得の高い人の負担が軽減されるだけでなく、貧しい人のための政策に必要な税収も失われる。  これに対して、農政の対象は飲食料品すべてではなく、国内農業で政治的に重要な農産物に限られる。具体的には、コメ、小麦、牛乳・乳製品、豚肉、牛肉、砂糖だ。これらは、TPP交渉で関税撤廃の例外とし、それができなければ交渉から離脱すべきだと、衆参の農林水産委員会で決議された品目である。  これらは国内農業上重要なだけでなく、ほとんどの国民が購入する必需品である。農政は、国内農業保護のために、これら農産物の価格を、関税や減反で高くして、消費者に負担させてきた。日本の農業保護は欧米に比べて著しく高いが、その7〜8割はこれらの品目について消費者が負担している高い価格である。  つまり、消費者は高い価格を払うことで農家に所得移転しているのだ。農家は貧しくない。畜産農家のかなりは2000万円ほどの所得がある。また、最近の高米価で、50ヘクタール規模のコメ農家の年間所得は1億円にも達する。貧しい消費者が高いコメを買うことで裕福な農家の所得を賄っている。これは格差拡大政策だ。  国内農業が生産しているものでも、これ以外の野菜、果物、卵、鶏肉については、政府が価格を高めて保護するということはない。また、国民の多くが消費する輸入品についても、キャビアや高級ワインなどはもちろん、バナナ、キウイ、トウモロコシ、大豆なども政策で高価格にしているのではない。  消費税の場合は飲食料品全てが対象となるのに対して、農政はコメなど必需品の価格を高めているのであり、逆進性は極めて高い。

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