【中間選挙展望③】世論調査が示す無党派層の共和党離れ、トランプ勝利を導いラテン系有権者も離反へ(中岡望)
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■民主党が下院で勝利する可能性は76%/■上院は共和党系の5州の結果次第/■トランプ大統領は共和党候補にとって「毒性のある存在」/■『NBC News』調査が示す“ラテン系有権者”の変化/■トランプ大統領は「期待外れだった」
■民主党が下院で勝利する可能性は76%
米国では、毎週、選挙に関する世論調査が発表される。大統領支持率から、政党支持率、選挙区の候補者に対する支持率の動向と、調査対象は極めて広い。世論調査が正確な結果を予測するわけではないが、選挙情勢を判断する重要な情報を提供しているは間違いない。こうした調査会社の情報をベースにしながら、ジャーナリストが現場の取材を行い、選挙報道が行われている。
たとえば、直近でいえば、10月5日に発表された米国の選挙データ分析会社のDecision Desk HQ(DDHQ)は、下院で民主党が勝利する確率を76%、共和党が勝利する確率を24%と評価している。上院では、民主党が勝利する確率 は56%、共和党が勝利する確率を44%としている。さらにDDHQは、民主党が上下両院を制する確率を52%、共和党が両院を維持する確率を23%、そして「ねじれ議会」になる確率を25%としている。
民主党が下院の過半数218議席を得るには、わずか3議席の上積みで足りる。トランプ大統領に対する逆風が強い状況を考えれば、民主党の勝利はまず間違いない。上院は、民主党が多数を得るには、現有議席をすべて守ったうえで、さらに4議席を奪う必要がある。上院議員の選挙区は州全体であり、共和党の強い州で民主党の候補者が勝利を得るのは容易ではない。
■上院は共和党系の5州の結果次第
上院の現有議席は、共和党が53議席、民主党が47議席(無所属を含める)である。改選数は、共和党が22議席、民主党が13議席である。今回選挙が行われる州で、共和党が議席を占めているアラスカ州、テキサス州、オハイオ州、メイン州、アイオワ州の5州の結果次第で、民主党が過半数の51議席以上を占める可能性がある。
DDHQは、民主党の各州での勝利確率を、アラスカ州61%、テキサス州55%、オハイオ州53%、メイン州50%、アイオワ州47%と見ている。この確率通りの結果になれば、民主党は4議席は確保できる。そうなれば選挙後の議席は、共和党49議席、民主党51議席となり、共和党と民主党は逆転する。ただ、純増が3議席に留まれば、議席数は50対50になり、バンス副大統領が上院議長を兼ねているので、上院での議決が同数になれば、バンス副大統領が最終決定権を握ることになる。
上記の5州で特に注目されるのは、テキサス州の選挙である。テキサス州上院選挙は、上院の多数派を決める重要選挙であると同時に、トランプ大統領とMAGA運動への信任投票になると見られている。テキサス州は「共和党の牙城」であり、「ポスト・トランプ時代」の共和党の方向性を左右する選挙である。トランプ系メディアのFox Newsの調査では、民主党候補が共和党候補を53%対46%で7ポイントリードしているという結果が出ている。
この結果に、Fox Newsの司会者は「どうしてこんなことがあり得るのか」と、共和党の劣勢を嘆いている。同調査では、熱狂的なトランプ支持派のMAGAに対して、トランプ大統領と距離を置く非MAGAの共和党員の22%が民主党候補を支持している結果が出ている。民主党の候補者は、「トランプ政権下で幻滅した共和党支持者がいる。民主党員、無党派層、共和党員を合わせた大きな連合を築く現実的な機会がある」と語っている。底流では、大きな政治的変化が起きつつあるのかもしれない。
■トランプ大統領は共和党候補にとって「毒性のある存在」
10月3日、『New York Times』は世論調査の結果を発表している(「Senate Races in Republican States Tilt Toward Democrats, Polls Find」)。
同記事は「中間選挙まで1か月となる中、上院の支配権を獲得するために議席奪取を狙っている民主党は、共和党が伝統的に強い5州において、リードを広げるか、共和党と互角またはそれに近い接戦に持ち込んでいる」と伝えている。と、前述したように、上院の支配権を決定する5州の状況を伝えている。
「調査では、以下の要因が選挙情勢を大きく変化させていることが示された。①トランプ大統領の非常に低い支持率、②イラン戦争への不支持、③高いガソリン価格や生活費への不満である。これらを合わせて見ると、新たな世論調査は、民主党が上院多数派を奪還する複数の道筋を持っていることを示している」と、民主党が優勢であると指摘している。
特に目立った現象は、共和党内に広がるトランプ離れである。『The Hill』は「上院共和党議員らは、トランプ大統領がノースカロライナ州、オハイオ州、アイオワ州、アラスカ州といった激戦州で上院選挙に勝つために不可欠な無党派層の有権者にとって、ますます『毒性のある存在』になっていると指摘している」と指摘している(10月2日「GOP senators warn Trump is hurting Republicans with independents」)。
さらに「トランプ大統領は共和党有権者に対し、中間選挙では『自分が投票用紙に載っていると思って投票してほしい』と促しているが、共和党上院議員の中には、それは無党派層に逆効果となり、上院多数を維持する上で危険な戦略だと考える者もいる」と、現実離れをしたトランプ大統領の存在を指摘している。共和党の上院議員は「有権者の40%は無党派だ。MAGA層だけでは勝てない」と語っている。トランプ大統領が無党派層の共和党離れを促進しているのである。さらにMAGAの間でも、トランプ大統領に対する熱量の低下がみられる。
テキサス州選出のジョン・コーニン上院議員は「大統領の支持率は、真っ赤なテキサスでさえ以前ほどではない。彼の名前が投票用紙に載っていないのに、選挙を彼中心にしてしまうのは、下位候補にとって必ずしも得策ではない」と語っている。
事実、無党派層のトランプ支持率が20〜30%台に落ち込んでいる。Fox Newsの全国調査では24%、AARPが行ったノースカロライナ州での調査では26%、Maristがテキサス州で行った調査では29%であった。Pew Researchが2026年に行った有権者の調査では、民主党支持29%、共和党支持28%、無党派44%であった。選挙では無党派の支持を得なければ勝てないのである。
■『NBC News』調査が示す“ラテン系有権者”の変化
選挙情勢の何が変わっているのだろうか。世論調査を見る限り、米国の政治の底流に確実に変化が起きつつあると思われる。最大の要因はトランプ大統領の不人気であるが、同時に有権者の意識も大きく変わりつつある。
米国では党に対する忠誠心が強い。その結果、選挙結果を決めるのは無党派層の動向と、伝統的な支持層の限界的な投票行動の変化である。2024年のトランプ候補の勝利の最大の要因は、伝統的に民主党の支持層であったヒスパニック系有権者がトランプ候補に投票したことであった。言い換えれば、極めて限界的な有権者の動きで選挙結果は大きく変わる可能性がある。今回の中間選挙で、ヒスパニック系有権者はどう投票するのかが、大きな焦点である。
ヒスパニック系有権者を対象とする調査が行われている。『NBC News』が10月4日に発表した調査である。同調査は、同社と米国最大級のスペイン語テレビネットワークTelemundoが共同で行ったものである(10月4日「Poll: Latino voters swing away from Trump and Republicans」)。調査対象は主にラテン系有権者である。同調査は、民主党が議会を支配することを望む人が59%、共和党が支配することを望むが35%であったと伝えている。
調査結果を解説している『NBC News』の記事は、冒頭に「ラテン系有権者は、ドナルド・トランプ氏を再びホワイトハウスへ押し上げる大きな力となった。しかし、現在ではその支持がトランプ大統領から離れつつある。この変化は、ラテン系住民の多い州や選挙区が勝敗を左右する可能性のある2026年中間選挙で民主党に大きな好機をもたらしている」と、有権者の変化を指摘している。
さらに「ラテン系有権者は、米国全体の有権者と同様に、物価高騰とトランプ政権の移民取り締まり政策に強い懸念を抱いている。トランプ大統領の支持率はラテン系有権者の間で27%にとどまった。また、3分の2は政権の強制送還政策について『行き過ぎだ』と答え、4分の3は経済運営や生活費への対応を支持していない」と、トランプ政権の政策に対する不満の存在を指摘している。もともとラテン系有権者は民主党の支持基盤であったが、2024年の大統領選挙でトランプ候補に投票し、トランプ勝利の最大の要因になった。
だが、今回の中間選挙では、ラテン系有権者は民主党に回帰しつつある。ラテン系有権者は「議会の多数派をどちらの党に担ってほしいか」という質問に対して、民主党が59%、共和党が35%となっている。同記事は「2024年の大統領選挙でトランプ氏に投票したラテン系有権者のうち、約5人に1人は『共和党が議会を支配することを望まない』と回答した。その内訳は、14%が民主党支持へ転じ、8%は支持政党を決めかねていると答えている」と、ラテン系有権者の変化を指摘している。
■トランプ大統領は「期待外れだった」
同記事はフロリダ州に住む59歳の女性の発言を紹介している。彼女はNBC Newsのインタビューで、「私はこれまでずっと民主党に投票してきたが、2024年にはトランプ候補に投票し、多くの友人にもそうするよう勧めた。当時は民主党の経済政策やトランスジェンダー政策に不満を抱いていた。しかし現在では、それが完全な間違いだったと感じている」と語り、トランプ大統領を「期待外れだった」と評した。
さらにラテン系有権者は、トランプ大統領の政策運営をほぼすべての主要分野で厳しく評価している。生活費への対応については78%が不支持、経済運営では74%、外交政策では68%、移民政策では69%が不支持と回答している。現在では、ラテン系有権者の約3分の2(65%)が、「トランプ大統領の政策は経済状況を悪化させた」と回答している。一方、「改善させた」と答えたのは23%、「ほとんど影響はなかった」は11%だった。
ただ、同記事は「今回の調査結果は、短期的には民主党に追い風となる内容だが、長期的には民主党にとっても課題が浮き彫りになっている。ラテン系有権者の共和党に対する否定的な見方は2024年以降大幅に増えた一方で、民主党への評価は改善していない」と、民主党にとっても状況は楽観できないと釘を刺している。