【日本市況】超長期金利が上昇、トランプ関税で財政懸念-円は小幅安

8日の日本市場では超長期金利の上昇(債券価格の下落)が加速した。トランプ米大統領の関税政策が日本経済に影響を与えかねず、財政積極化の懸念から債券が売られている。

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  30年国債利回りが前日比10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。参議院選挙を控える石破茂首相が25%のトランプ関税の影響を和らげるために財政政策を打ってくるとの見立てが出ている。株式は小幅高。米関税で日本銀行の利上げが先送りされるとの観測から円は一時1ドル=146円半ばまで下落した。

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  米関税を巡っては35%に引き上げられるといった最悪シナリオは回避されたが、影響は小さくない。石破首相には発効日までの交渉期間があるが、参院選挙を前に実質的に残された時間は多くない。

  野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストはトランプ関税について、日銀利上げの遅れにつながる可能性が高い点は円安材料だと指摘した上で、参院選に向けて「石破政権には不利に働き、財政および金融政策のハト派化期待を高める可能性もある」とリポートに記した。

8日の国内債券・為替・株式の動き-午後1時38分
  • 新発10年債利回りは一時3ベーシスポイント(bp)高い1.485%
  • 新発20年債利回りは一時6bp高い2.485%
  • 新発30年利回りは一時10bp高い3.065%
  • 長期国債先物9月物は一時前日比20銭安の138円92銭に下落
  • 円は対ドルで1ドル=145円92銭(日本市場の7日午後5時時点は145円21銭)
  • 東証株価指数(TOPIX)は前日比0.1%高の2814.89
  • 日経平均株価は0.2%高の3万9679円90銭

債券

  債券相場は超長期債中心に下落(金利は上昇)。財政拡大懸念から売りが続いている。5年国債入札の結果を受けて超長期金利が上げ幅を縮める場面はあった。

  三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、米関税25%で日銀利上げが遠のくことにつながると指摘した。これで中期債は買いが入るが、フラット(平たん)化しないということで超長期債が売られている面もあると述べた。

  さらに関税で景気下押しによる財政拡張に対する懸念の高まりも超長期債の売り材料になっているとした。

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  5年国債の入札結果は、最低落札価格が100円03銭と市場予想と一致。小さいと入札好調を示す平均落札価格との差(テール)は2銭と1月以来の小ささとなった。応札倍率は3.54倍となり、過去1年平均の3.8倍は下回った。

  SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは電話取材で、5年債入札は「無難な結果だった」と述べた上で、超長期債が売られているのは生命保険の記事が効いていると述べた。住友生命は金利上昇は沈静化すると言っているが、当局頼みで自ら買いに動くわけではないと受け止められているとしている。

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為替

  外国為替市場で円相場は下落。一時1ドル=146円半ばまで値下がりした。トランプ米大統領が25%の対日関税を通告したことを受け、日本経済への影響が懸念されている。日銀利上げの遅れ懸念から円買いポジションが巻き戻され、円売りが加速するリスクもある。

  みずほ銀行国際為替部の長谷川久悟マーケット・エコノミストは、日本企業がトランプ大統領の要求通りに生産拠点を米国に移せば貿易収支が悪化することに加え、関税コストの一部を負担する状況が続けば収益を圧迫して賃上げの妨げとなり、日銀の利上げの障害になり得ると指摘した。日米通商交渉は「円安を想起させる要素が多い」という。

  同時に「足元では円売りが加速するムードではないため、ドルは5、6月の高値である148円まで行かず、行っても147円までだろう」とみている。

  りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストも、日銀の利上げが遠のくことから円が売られやすい地合いが続くとみている。日銀は8月1日以降も経済への影響を慎重に見極めざるを得ず、早ければ10月という見方もあった利上げは来年1月にずれ込むだろうとした。

株式

  東京株式相場は小幅高。TOPIXは下落に転じる場面が目立つ。

  トランプ大統領の日本への関税率25%が事前に懸念されていたほど強硬策ではないとの見方や円安、日米交渉が今後進展することへの期待感が広がった一方、参院選を控えた不透明感から積極的な買い手に乏しい。

  T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは、25%という関税率が高いことは間違いないが7月下旬の参議院選挙後に日米間で貿易協定がまとまる可能性についてはまだ楽観的な見方もあると指摘した。

  一方でバンテージ・グローバル・プライムでマーケットアナリストを務めるヘベ・チェン氏は、海外投資家にとって25%の関税水準がトランプ大統領の当初提示していた24%を上回る点が日本株にとってネガティブ材料となる可能性があると指摘した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

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